エッセイ · 嗅覚アート

クララ・ウルシッティ(Clara Ursitti)「Self-Portrait in Scent, Sketch no. 1」(1994)。

Clara Ursitti. Self-Portrait in Scent, Sketch no. 1 (1994).

クララ・ウルシッティ「Self-Portrait in Scent, Sketch no. 1」(1994)


「Self-portrait in Scent, Sketch no 1」。

電子扉のある、特別に設えた小さな部屋の中に、モーションセンサー付きの香りのディスペンサー。香りは合成香料。

展示:「New Art In Scotland」グラスゴー現代美術センター(The Centre for Contemporary Arts)およびアバディーン市立美術館(Aberdeen City Art Gallery)、1994年。バルトーク・ギャラリー(Bartok Galleria)、ブダペスト、ハンガリー。

画期的な1994年の作品「Self-Portrait in Scent, Sketch no. 1」で、スコットランド系カナダ人アーティストのクララ・ウルシッティは、現代美術における最初期の嗅覚による自画像のひとつをつくり出した。自己表象という伝統的で視覚的な概念から離れ、ウルシッティは香りだけを用いた。像も、テキストも、物理的な似姿もなく、自らのアイデンティティを描き出した。

インスタレーションは観る者を香りに満ちた空間へと招き入れた。そこに放たれていたのは、汗やフェロモンの痕跡など、作家自身の体臭をもとに化学的に分析され、調香師によって再構成された香りの構成である。その結果生まれたのは、作家との見えない、没入的な出会い。視覚ではなく、嗅覚を通しての。

自画像のメディウムを視覚から嗅覚へと移すことで、ウルシッティは西洋美術における眼の支配に異議を唱え、深く個人的でありながら誰にでも開かれたつながりのかたちを示した。「Self-Portrait in Scent」は、公と私、可視と不可視の境界を探り、親密で根源的なものとしての香りが、存在、記憶、アイデンティティをいかに形づくるかについての省察を促した。

この作品はいまや嗅覚アートとコンセプチュアル・アートの里程標とみなされ、感覚の実験と言葉によらない自己表現に新たな領域を開いた。

クララ・ウルシッティ「Self-Portrait in Scent, Sketch no. 1」(1994)