エッセイ · 嗅覚アート

マクスウェル・ウィリアムズ(Maxwell Williams)「Anosmiac!」

Maxwell Williams. Anosmiac!

溶けるためにつくられた蝋の都市。

マクスウェル・ウィリアムズ「Anosmiac!」:蝋燭の蝋でできた都市、悪役アノスミアックをめぐる紙の作品、ウランガラスの瓶に入った香水 SECRET LAIR

撮影:The Institute for Art and Olfaction · The Institute for Art and Olfaction



ベルジャーの下の都市

スーパーマンの物語で、カンドールは惑星クリプトンの首都だ。縮められてガラス瓶に閉じ込められ、スーパーマンが孤独の要塞に保管している。人々はまだ生きているのに、出ることのできない無傷の都市。失われた世界の形見。

ロサンゼルスの美術家マイク・ケリー(Mike Kelley)は、何年もかけてカンドールのシリーズに取り組んだ。彼は、コミックのなかでこの都市が二度と同じように描かれていないことに気づいた。描き手ごとに、コマごとに、違う形。ケリーはベルジャーの下に、光る色つき樹脂で多くのバージョンをつくった。決して一致しない記憶のように。

「Anosmiac!」はそこから始まる。マクスウェル・ウィリアムズの展覧会は、2022年9月1日から26日まで、ロサンゼルスの IAO Gallery で開かれた。ケリーの構造を借り、それを裏返す。

鼻をもつ悪役

ウィリアムズはアノスミアックという新しい悪役を生み出す。超自然の鼻を授かり、同時にそれに呪われている。かつてスーパーマンのような英雄にひどい目に遭わされた。いま彼は、カンドールによく似た都市を壊そうとしている。その都市もまた、ベルジャーの下に封じられている。

名前がすでに冗談だ。アノスミア(anosmia)は嗅覚を失うことを指す言葉。その名を背負う者が、誰よりも強い鼻をもつ。超能力に、それが否定するものそのものの名をつけたかのように。

アノスミアックの物語は、ギャラリーに並ぶ紙の作品で語られる。完成したコミックはない。あるのは断片だけ。人物、恨み、標的。残りは来場者が組み立てる。

蝋燭、型、光るガラス

「Anosmiac!」の都市は蝋燭の蝋でできている。ケリーがいくつものカンドールをつくったように、いくつものバージョンがある。ただし型が変わっている。ウィリアムズはさまざまな性具から蝋を型取りした。一見すると、塔は未来的な建築に見える。近づくと、別のものだとわかる。

その細部は、ウィリアムズの歩みに合っている。彼は調香師であり、嗅覚アーティスト、研究者、DJ、プロデューサー、そしてロサンゼルスを拠点とする書き手だ。レイヴ文化に着想を得た、性別をスペクトラムとしてとらえるライン UFO Parfums を創設した。作品はパフォーマンス、彫刻、写真を行き来し、個人的な歴史に触れる。サドマゾヒズム、テクノとガバの夜、世界の交易路、失恋、そして匂いを嗅ぐ快楽の心理。

蝋燭の都市の横に、新しい香水 SECRET LAIR が立つ。ウランガラスの瓶に入っている。少量のウランを含み、紫外線の下で緑に光るガラスだ。悪役の基地から押収された証拠品のように見える瓶。

ウィリアムズは、この展覧会を主催した Institute for Art and Olfaction の理事も務めている。

匂いが超能力になるとき

大衆文化では、超能力はほとんどいつも目と筋肉のものだ。壁の向こうを見る、空を飛ぶ、車を持ち上げる。鼻が武器として扱われることはまれだ。「Anosmiac!」はそれを中心に置く。

そして武器は標的にふさわしい。蝋燭の都市は、壊すのに叩き割る必要がない。火をつければいい。匂い、そして消える。鼻をもつ悪役は誰よりもそれをわかっている。蝋にとって、破壊と香りを放つことは同じ行為なのだ。

同じ2022年、ウィリアムズはニューヨークで「CNC Musk Factory」を開いた。そこでは匂いが拘束のひとつの形として使われた。「Anosmiac!」はもっと軽く、遊び心があり、コミックの声で語る。けれど問いは近い。匂いを支配するのは誰か。鼻は周りの世界に何ができるのか。