エッセイ · 現代アート
オラファー・エリアソン「The weather project」。
Olafur Eliasson. The weather project.
天気は誰もが話題にし、誰もよく見ないもの。
Tate Modern · Tate Modern
タービン・ホールの太陽
タービン・ホールは、ロンドンのテート・モダンで最も大きな空間。かつては発電所のタービン室だった。美術館は毎年、The Unilever Series として、この空間のためだけの作品をひとりの芸術家に依頼する。2003年、四回目の委嘱は1967年生まれのオラファー・エリアソンに渡った。
「The weather project」は2003年10月16日から2004年3月21日まで、入場無料で開かれた。ロンドンの冬のあいだずっと、ホールの奥に太陽がかかっていた。
太陽は、街灯に使われる単一周波数ランプおよそ二百個を、スクリーンの裏に半円に並べてつくられた。天井はミラーフォイルを張ったアルミの枠で覆われた。上に映り込んで、半円は円になった。鏡の中で、ホールの高さは倍になった。
霧、鏡、黄色い光
単一周波数ランプは、黄色がかったオレンジの狭い帯の光だけを放つ。その下では、ほかの色はほとんど消える。服も顔も鞄も、黄と黒の二つの色調に落ちる。ホールは古い写真のように見えた。
機械が霧を空中に放った。霧は雲のような形に集まり、やがてホール全体に薄れていった。太陽がくっきりするときもあれば、蒸気の向こうに霞むときもあった。屋内の天気は、本物の天気のように移り変わり続けた。
エリアソンは仕掛けを隠さなかった。歩きまわり、天井をよく見れば、訪れた人にはすべての仕組みが見えた。ランプ、枠、機械。その知識で幻想は壊れなかった。自分から歩み入ることを選ぶ幻想になっただけ。
床の上の人々
誰も予想しなかったのは、観客の応え方。人々はただ立って見るのではなかった。コンクリートの床に横たわった。群れになって、列になって。鏡を見上げ、太陽の下に小さく横たわる自分を見た。体で言葉を綴り、映り込みの中で読めるようにする人もいた。
美術館のホールが、冬のさなかの夏の芝生になった。見知らぬ人が見知らぬ人の隣に横たわった。誰に言われたわけでもない。
だから作品は太陽でも鏡でもなかった。その下で人々が立ち、そして横たわってしたこと。見る人は像の一部になり、その中に自分を見た。
人々がそれほど長くとどまったのは、そのためかもしれない。壁の絵は数分見られて終わる。屋内の太陽は、座り、横たわり、霧が来ては去るのを待つよう誘う。ホールの時間はゆっくりになった。誰も急がなかった。冬へ向かう大都市に、何もしないことが許される場所があった。黄色い光の下に横たわり、見上げるだけ。
天気の話
テートは18世紀のサミュエル・ジョンソンの言葉で作品を紹介した。二人のイギリス人が出会えば、最初の話題は天気。互いにすでに知っていること、暑いか寒いか、晴れか曇りか、風があるか凪か、を急いで伝え合う。
エリアソンはその世間話を主題にした。天気は毎日その中で暮らしているのに、現象として見ることはめったにない。それを部屋に運び込み、ランプと機械で組み立てることで、彼は訪れた人に問わせた。私は何を見ているのか、何を通して見ているのか。
エリアソンはほかの多くの作品でも光と色を扱っている。「Yellow versus purple」のように。けれど「The weather project」では空がまるごと屋内に築かれ、観客は体で応えた。何年たっても、タービン・ホールの話はたいていあの屋内の夕日に戻っていく。