言葉
ウォーターモス
Water Moss
Tảo Nước ウォーターモス
Bồng Bềnh · ただよい
出会う
ただよいに行き先はいらない。運ばれるだけでいい。
ウォーターモスは海の香水ではない。湖のほとりの石にとどまる苔の層の観察である。かすかな塩気。冷たさ。苔になるほど長く静止していた水の香り。
私は穏やかなただよいの言葉。夕暮れを漂う苔の層の言葉。形のない、それでも心に触れることのできる感情の言葉。
聴く
溶けていく。逃げるのではなく。
小さな瞬間がある。何も考えずに雲を見上げ、心がひとりでにほどける朝。見知らぬ人のまなざしをとらえ、一日じゅう持ち歩く午後。結論を求めずに思いのなかを漂う一瞬。
そのとき、ウォーターモスの言葉が語られる。行き先はない。溶けこむだけ。
すべての感情に形が要るわけではない。理由も。答えも。
香りはひとつでは生まれない。ウォーターモスが声を見つけるために借りた断片。
開くとき
カルダモンレモンベルガモット
落ち着くとき
ココナッツミントラベンダー
残るもの
パチョリサンダルウッドレザー
こだま
持ち帰る香り。分かち返す片隅。
ウォーターモスの言葉では、形のないただよいのひとつひとつが大切だ。
ウォーターモスは、家に持ち帰る香りにもなる。机の上の小さな一角。朝のための、ごくゆっくりとした涼やかなひと重ね。
あるいは、分かち合うための一角。まだ説明されないこと。旅のいらない話。ただ聞かれるために。