言葉
ホワイトムスク
White Musk
Xạ Hương Trắng ホワイトムスク
Thầm Thì · ささやき
出会う
ささやき、やわらかな触れ合い、静かなときめき。それでも果てしなくこだまする。
ホワイトムスクは重いムスクの香水ではない。形のない香りの観察である。肌の香り。音を立てず、注目を求めず、静かな水の下にやわらかな流れを残すだけの香り。
私は声に出さなくていいものの言葉。黙って手を握ることの言葉。一拍長く留まるまなざしの言葉。誰も名づけないのに、ふたりとも感じている想いの言葉。
聴く
やさしい跡。どんなはっきりした音よりも長く。
小さな瞬間がある。言葉もなく、黙って手を握る夕べ。まなざしを一拍長く留め、そして目をそらす朝。ひとりのためにしまっておく、言葉での返事を求めない感情。
そのとき、ホワイトムスクの言葉が語られる。声は上げない。跡を残すだけ。
すべての感情に披露が要るわけではない。聞かれることも。見られることも。
香りはひとつでは生まれない。ホワイトムスクが声を見つけるために借りた断片。
開くとき
ホワイトムスクイランイランバジル
落ち着くとき
リリーアイリスローズ
残るもの
アンバーバニラベチバー
こだま
持ち帰る香り。分かち返す片隅。
ホワイトムスクの言葉では、ささやきのひとつひとつが大切だ。
ホワイトムスクは、家に持ち帰る香りにもなる。机の上の小さな一角。音量のいらない一日のための、やわらかなムスクのひと重ね。
あるいは、分かち合うための一角。声に出されなかったこと。見せる必要のない話。ただ聞かれるために。