言葉
烏龍茶
Oolong Tea
Trà Ô Long 烏龍茶
Thỏ Thẻ · つぶやき
出会う
つぶやく。恥ずかしいからではなく、ただひとりの耳に向けたものだから。
烏龍茶は濃い茶の香水ではない。半ば酸化した葉の観察である。緑と黒のあいだ。新鮮さと深さのあいだ。葉のあいだを抜ける風のように軽く、ほかの誰にも聞くことを求めない香り。
私はそよ風のように軽いものの言葉。音量はいらず、説明を求めない近さだけが要る香りの言葉。まなざしで語られる愛の言葉。
聴く
やわらかなひとこと。ひとりに聞こえるだけの。
小さな瞬間がある。ひとりのためだけに烏龍茶を淹れる午後。ただひとりの読み手に宛てた一行を送る夕べ。ひとつの心に聞こえるだけの声で話す一分。
そのとき、烏龍茶の言葉が語られる。怖いからではない。ただひとりの耳に向けたものだから。
すべての感情に披露が要るわけではない。知られることも。称賛も。
香りはひとつでは生まれない。烏龍茶が声を見つけるために借りた断片。
開くとき
ハニーサックルスイートピーベルガモット
落ち着くとき
茶葉ユーカリクラリーセージ
残るもの
トンカビーンベンゾインムスク
こだま
持ち帰る香り。分かち返す片隅。
烏龍茶の言葉では、つぶやきのひとつひとつが大切だ。
烏龍茶は、家に持ち帰る香りにもなる。机の上の小さな一角。ひそやかな午後のための、半ば酸化したひと重ね。
あるいは、分かち合うための一角。ひとりの耳に向けたこと。見せる必要のない話。ただ聞かれるために。