言葉
タバコ
Tobacco
Thuốc Lá タバコ
Lân La · そろりと近づく
出会う
そろりと近づき、一度も名を呼ばない。
タバコは重い煙の香水ではない。乾いたタバコの葉、まだ火のつかない煙の観察である。蜜のよう。革。細い煙がめぐり、触れもせず、離れもしない。
私はゆっくりと、意図をもって近づくことの言葉。歩みは遅くなり、心は近づいていく言葉。必要以上に長く留まるまなざしの言葉。
聴く
まだ火はつかない。それでももう漂っている。
小さな瞬間がある。誰かのそばを一拍遅く通り過ぎる夕べ。半分本気、半分冗談の一行を、返事を待たずに送る。理性と欲望のあいだの繊細な空間に、急がず、立ち止まっている。
そのとき、タバコの言葉が語られる。急がず。あらわでもなく。それでも、紛れもなく意図されている。
すべての感情に名前が要るわけではない。触れることも。去ることも。
香りはひとつでは生まれない。タバコが声を見つけるために借りた断片。
開くとき
タバコベルガモットイランイラン
落ち着くとき
アンバーベンゾインシダーウッド
残るもの
パチョリブラックムスクインセンス
こだま
持ち帰る香り。分かち返す片隅。
タバコの言葉では、そろりと近づくひとつひとつが大切だ。
タバコは、家に持ち帰る香りにもなる。机の上の小さな一角。夕べをめぐる、革と蜜のひと重ね。
あるいは、分かち合うための一角。まだ名のないこと。途切れのいらない話。ただ聞かれるために。