言葉
紅茶
Black Tea
Trà Đen 紅茶
Dìu Dịu · やわらか
出会う
深さは長い道のりから来る。深くあろうとすることからではない。
紅茶は甘いお茶の香水ではない。陽と時間のなかを歩いてきた一枚の葉への観察である。陽に干され。酸化し。ゆっくりと色を深める。煙。蜂蜜。乾いた木。
私は、歳月によってたどり着いたやわらかさの言葉。もう何かになろうとしない味わいの言葉。暗く色づいても、決して尖らない葉の言葉。
聴く
すでに足りているから、やわらかい。
小さな瞬間がある。あたたかな湯呑みを手にする午後。あらゆる急ぎが肩から落ちた朝。誰かがそばにいなくてもいい、ひとときのぬくもり。
そのとき、紅茶の言葉が語られる。急がない。ただひとつの長い息。
すべてのやわらかさが弱いわけではない。わざと柔らかくしたのではない。意図して軽くしたのでもない。
香りはひとりでは生まれない。これは、紅茶が自らの声を見つけるために借りる断片。
開くとき
ミントベルガモット緑茶
落ち着くとき
紅茶ジャスミン金木犀
残るもの
マテムスクオリス
こだま
持ち帰る香り。分かち返す片隅。
紅茶の言葉のなかでは、十分に長く生きてきたどの物語にも居場所がある。
紅茶は持ち帰る香りになりうる。机の上の小さな片隅。午後のためのあたたかなひと重ね。
あるいは分かち返す片隅に。まだ名づけられていないもの。助言を必要としない物語。ただ聴かれるためだけに。