エッセイ · 現代アート

レイチェル・ホワイトリード(Rachel Whiteread)「Untitled (Stairs)」

Rachel Whiteread. Untitled (Stairs).

見慣れた上り道を横に倒すと、奇妙になる。

レイチェル・ホワイトリード「Untitled (Stairs)」。ジグザグの階段を象牙色で型取りし、ギャラリーのなかで横に倒したもの

Tate · Tate



横に倒された階段

ギャラリーに、高さ4メートル近く、長さ6メートル近い大きな象牙色の塊が立っている。それが階段だとわかるには少し時間がかかる。より正確には、階段の上の空間を固体に鋳込んだもの。

階段は三つの四角い踊り場を経てジグザグに下る。だがホワイトリードは、人が上る向きには据えなかった。型を90度回転させ、かつて壁だった縁で立たせた。段はいま横へ、上へと続く。誰も歩けない方向へ。

作品は「Untitled (Stairs)」、2001年。テートは2003年、Art Fund とテート・メンバーズの支援を得て購入した。2003年のテート・トリエンナーレ、2017年のテート・ブリテンでのホワイトリードの大規模な展覧会、そして2018年のウィーンのベルヴェデーレ21で展示された。

シナゴーグだった建物

階段は、ロンドン東部ベスナル・グリーンの建物のなかにあった。1999年、ホワイトリードとパートナーはそれを自宅兼スタジオとして購入した。

建物には幾層もの過去があった。はじめはシナゴーグだった。第二次世界大戦で爆撃を受け、1950年代に再建された。地域のユダヤ人人口が減るにつれ、使われなくなった。1970年代には繊維会社が倉庫として使った。その後何年も空き家のままだった。ホワイトリードが見つけるまで。

ちょうど同じころ、グッゲンハイムが、ベルリン、ビルバオ、ニューヨークの館を巡回する展覧会のための制作を彼女に依頼した。彼女は最初、グッゲンハイムの建物そのものを考えた。それから考えを変え、自分の建物に目を向けた。

彼女は地下室、三つの階段、1階の二つの住戸、そしてシナゴーグの床を型取りした。「Untitled (Stairs)」はその階段のひとつである。同じ取り組みから生まれた別の作品「Untitled (Rooms)」もテートのコレクションにある。こうして彼女は、自分のために手を加える前に、建物を見つけたときのまま正確に残した。

固体で、しかも空洞

型取りの前に、ホワイトリードは10分の1の模型を作った。固まった空間がどう見えるか、彫刻をどう置くべきかを思い描くために。

素材はジェスモナイト。通常の石膏より丈夫なポリマー強化石膏で、ガラス繊維のマットを重ねて層を作る。それを階段、壁、そして手すりに沿って取りつけたパネルに直接塗り、型とした。型の厚さはおよそ8センチ。

作品は10個の別々の型をボルトで留めてひとつにしたもの。外から見ると密で重い。実際には殻で、内部は空洞である。

その細部は、考えに奇妙なほどよく合う。ホワイトリードは空っぽの空間、つまり何もなかったものを型取りした。そしてその空間を表す物もまた、内側に何も持たない。

階段を倒すまでの8年

ホワイトリードはそれ以前にも建築の規模で型取りをしていた。1990年の「Ghost」はロンドン北部のヴィクトリア朝の家の一室だった。1993年の「House」はロンドン東部のテラスハウス一棟で、数か月のうちに取り壊された。その経緯は Penta が「House」のエッセイで語っている。だが階段は、別の幾何学的な問題を投げかけた。

2001年、彼女はこれをおよそ8年やりたかったと語った。惹かれたのは、階段を横に倒せるという感覚だった。階段を図解したいのではなかった。建築を少しひっくり返し、何かの周りや中を動くことについての考え方を変えたかった。

結果は、見慣れていて、しかも不可解なものになった。体はすぐに段を知る。頭は働かなければならない。本当の階段を組み立て直す。どちらが上で、どちらが下か、かつて人はどこに立っていたか。完全に解ける人はいない。だから人はその前に長く立つのかもしれない。