エッセイ · 嗅覚アート
Ade Darmawan. Santalum Album Family.
貴重な木が、石油ドラムの上で燃えている。
展示風景、ROH、ジャカルタ。撮影:Maruto Ardi · Artforum
石油ドラム、ガスコンロ、木の匂い
「Santalum Album Family」は、アデ・ダルマワンが2024年に制作した作品だ。主な素材は、インドネシアの国営石油ガス会社プルタミナ(Pertamina)の名が記された石油ドラム。ドラムは、ふつうの台所にあるオレンジ色のガスコンロに溶接されている。
コンロのホースから出てくるのは、ガスの匂いではない。白檀の燃える匂いだ。それはドラムのまわりに広がる。深く、煙たく、こうした物から予想されるガソリンの匂いとはまったく違う。
この食い違いが、訪れる者が最初に出会うものだ。目は産業用の石油ドラムを見る。鼻は貴重な木を見つける。寺院で、儀式で、高価な物に使われる木。二つは相容れない。作品はそれらを並べたまま、見る者がなぜと問うまで置いておく。
この作品は2024年、ジャカルタの ROH で「Water Resistance」に展示された。ダルマワンが二つの会場に分けた展覧会で、もうひとつの会場はジョグジャカルタの Cemeti だった。
Cendana:通りと一族
答えは名前にある。Santalum album は白檀の学名。インドネシア語で白檀は cendana。そして Cendana は、インドネシア第2代大統領スハルトが私邸を構えたジャカルタの通りの名だ。
インドネシアでは、Cendana という名は長く彼の一族と結びついてきた。だから題の Family という語は、地元の観客には説明がいらない。木の匂いが名指しの方法になる。控えめで、同時に明白に。
プルタミナのドラムは、この言葉遊びを特定の歴史へ結びつける。作品はプルタミナの石油危機と、国の石油の富を枯渇させるうえでスハルトとその一族が果たした役割を指している。石油は共有の財産だ。白檀の燃える匂いは、それが少数のために燃やされたと告げる。
ダルマワンはスローガンを書かない。匂いにそれをさせる。物語を知らない人は、香りのよい木の匂いだけを嗅ぐ。知っている人は、もう二度と同じようには嗅げない。台所の物と寺院の匂いが並ぶだけで、人々が何年も小声でしか言わなかったことを語るのに十分だ。
水、石油、抵抗
「Water Resistance」は、蒸留と物質の変容を、植民地時代の香辛料から現代の石油に至るインドネシアの採取の歴史の像として用いる。ジャカルタのコレクティブ ruangrupa の共同創設者であるダルマワンは、国の資源で誰が得をするのかという問いに長年取り組んできた。
題は二通りに読める。水を通さない被膜のような、耐水。あるいは水そのものの抵抗。液体で、漂い、つかみにくいものたちの抵抗。石油も精油もここに属する。流れ、蒸発し、招かれていない場所へ染み込む。
同じ展覧会には「Tuban」も含まれていた。香辛料の蒸留器がスハルトの伝記の上に油を滴らせる作品だ。二つの作品は、異なる道を通ってひとりの男を指す。「Tuban」は文字と文学を通る。「Santalum Album Family」は名前と石油ドラムを通る。
どちらにおいても、匂いは署名のない証拠だ。歴史を語り直しはしない。ただ漂い出て、嗅ぐ者に残りをつなげさせる。