エッセイ · 現代アート
アーサー・ジャファ「Love Is the Message, the Message Is Death」
Arthur Jafa. Love Is the Message, the Message Is Death.
喜びと悲しみは、同じ拍を刻む。
Museum of Contemporary Art Chicago · Museum of Contemporary Art Chicago
七分間、一曲
「Love Is the Message, the Message Is Death」は、アーサー・ジャファ(Arthur Jafa)が2016年に完成させたカラー、サウンド付きの映像作品。長さは約七分。下に流れる曲の長さにほぼ等しい。同じ年に発表された「The Life of Pablo」の冒頭曲、カニエ・ウェスト(Kanye West)の「Ultralight Beam」。
曲の上を、途切れない映像の流れが走る。白黒のアーカイブ。ニュース映像。揺れて、ぼやけた、縦長の携帯動画。映画、ミュージックビデオ、スポーツの場面。ジャファ自身が撮った映像もある。そのすべてが、アメリカの黒人の生をめぐっている。
ナレーションはない。人や場所を示す字幕もない。観る者は見覚えのある顔もあれば、知らない顔もある。映像は説明のために止まらない。
拍に合わせた編集
ジャファは映画の出身。ジュリー・ダッシュ(Julie Dash)の1991年の映画「Daughters of the Dust」の撮影監督を務め、現代アートの世界にその名が知られる前、長年カメラの後ろで働いた。その背景が編集に表れている。
映像は日付順にもテーマ順にも並ばない。曲に従う。声が沈むと映像はゆっくりになる。聖歌隊が高まると、カットは密に、速くなる。スローになる映像も、つかえる映像もある。フィルムが観る者の脈に追いつこうとしているかのように。
ジャファは、黒人音楽の力と感情をもつ映画を望んでいると語ってきた。「Love Is the Message」は七分間でそれを試みる。物語は語らない。歌が聴き手を導くように導く。
だから映像は良い部分と悪い部分に分かれない。選手が跳び上がって得点し、次に誰かが舗道に押さえつけられ、次に女性が教会で踊る。一つひとつの映像が、その前の映像の意味を変える。
ひとつの流れの中の喜びと暴力
題は向かい合う二つの半分でできている。愛がメッセージ。メッセージは死。映像は両方を抱え、どちらも選ばない。
本物の喜びが見える。踊り、歌、スポーツ、高揚の瞬間。本物の暴力も見える。その多くは居合わせた人のカメラが撮ったもの。あの頃ネットに広まった種類の映像。二つがあまりに速く入れ替わるので、どちらも単独では感じられない。
だからこの作品は、観るのがつらく、忘れるのが難しい。論評のための距離を与えない。観る者を流れの中に置く。そこでは喜びと痛みが一緒にやって来る。作品が記録する生の中で、そうやって来るように。曲もまた両面を運ぶ。ゴスペルと祈りの息づかいとともに。慰めと叫びが同時に。
ひとつの作品、いくつものコレクション
この映像は2016年末にニューヨークで初公開され、まもなく広く上映された。シカゴ現代美術館(Museum of Contemporary Art Chicago)とアムステルダム市立美術館(Stedelijk Museum Amsterdam)がコレクターの R.H. Defares から共同で寄贈を受け、ほかの美術館も所蔵している。
その素材には目をとめる価値がある。既存の映像から大部分が組み立てられ、その多くがかつて何百万もの携帯の画面を流れ過ぎた作品が、美術館の保存するものになった。単独なら、その断片は簡単に流し見される。拍に合わせて編まれると、それらは私たちにとどまることを求める。
音楽を共同体が記憶を保つ方法とする、よく似た信念から、コーリーン・スミス(Cauleen Smith)は詩人ワンダ・コールマンのためのソングブックをつくった。形は違う。けれど両者とも、物語が運べないものを歌は運べると信じている。