エッセイ · 嗅覚アート
アザ・エル・シディーク「Echoes to Omega」
Azza El Siddique. Echoes to Omega.
水は昇り、集まり、落ちる。香りはその循環をたどる。
細長い地下室、六体の像
「Echoes to Omega」は2024年8月9日、ピッツバーグのインスタレーション美術館マットレス・ファクトリーで始まり、2025年9月14日まで続いた。一年以上。それが大事なのは、この作品が時間とともに変わるから。
部屋は狭く細長い地下室。来場者は開いた鉄の枠組みのあいだ、鉄のメッシュの床を歩く。高架の通路のように。水はその下と両側にある。
両側に、六体の粘土の胸像が三体ずつ二列に並び、胸まで酸化した水に沈んでいる。水は錆色で、時間とともに錆が粘土にしみ込む。「The Brooklyn Rail」の評者は12月に訪れ、すでに像の上に広がる染みを見ている。
ポンプと点滴灌漑の仕組みが水を動かし続ける。水は蒸発し、凝結し、落ちる。部屋は閉じた循環。とてもゆっくりとした雨のように。
セヌウィ夫人
六体の像は、ある古代の像の複製。セヌウィ夫人(Lady Sennuwy)、約四千年前に彫られたエジプトの貴婦人。原像は1913年にスーダンで発見され、重さは約1トン。いまはボストン美術館(Museum of Fine Arts, Boston)の常設コレクションに属する。
エル・シディークは複製を手で造形しなかった。原像の3Dスキャンを使い、ロボットで粘土から胸像を削り出させた。古代の形がデジタル技術を通り抜け、土へ戻る。
それは彼女の主題にとって大事なこと。エル・シディークはスーダンのハルツームに生まれ、カナダへ、それからアメリカへ移り、ニューヘイブンに暮らしている。セヌウィの像もまた移民。エジプトでつくられ、スーダンに埋められ、掘り出され、ボストンへ運ばれた。像とアーティストは、もはや故郷ではない土地の物語を分かち合う。
部屋の奥の祭壇の両側で、二台のモニターがアムドゥアトの抜粋を映す。古代エジプトの葬祭文書で、その名は「冥界にあるもの」を意味する。太陽が再び昇るまでの、夜の十二の時間を追う。
熱した板の上のサンダリヤ
部屋の奥に祭壇が立つ。小さな泉が、サンダリヤ油を混ぜた水を、工業用のヒーターパッドで温められた金属板に滴らせる。一滴ずつ落ち、熱せられ、蒸発する。匂いが広がる。
サンダリヤは、スーダンのムスリムの埋葬儀礼で使われる香油。温かく、木の匂いがする。見送りに使われる。死者への最後の手当てとして。
来場者はたいてい、それが何か知る前に匂いに気づく。冷たく湿った地下室に入ると、そこにそぐわない温かく柔らかなものに出会う。沈んだ像のあいだの鉄の道を歩き、その源にたどり着く。
匂いが儀式を現実にする。画面のアムドゥアトは古く、遠い文書。サンダリヤはここにあり、来場者の肺に入っていく。ハルツームの喪の家の空気に入ってきたように。
すべてが状態を変えていく
エル・シディークは変容を扱う。生から死へ、死から再生へ、固体から液体へ、液体から蒸気へ。彼女の道具は「死者の書」のような古代の文書から人工知能にまで及ぶ。2025年、グッゲンハイム・フェローに選ばれた。
「Echoes to Omega」では、あらゆる素材が形を変えていく。水は蒸発する。鉄は錆びる。粘土は染まる。油は空気に消える。静止するものは何もない。だから作品は、訪れる月によって違って見える。
「The Brooklyn Rail」の批評は、この作品を移住、腐朽と再生、死すべき運命、祖先の記憶、帝国の没落を通して読む。セヌウィはとうに途絶えた王朝に属していた。その複製はアメリカの地下室でゆっくりと錆びていく。それでもサンダリヤは今日も、本物の葬儀で使われている。
同じ年月に、ジョナサン・ボールドック(Jonathan Baldock)はGrave Goodsのために、陶の器に弔いのハーブを収めた。二つの作品はまるで違う。けれど両者とも、匂いは生者が死者と最後の道のりを共に歩く方法だと考えている。