エッセイ · 嗅覚アート

クリストフ・ロダミエル(Christophe Laudamiel)「Phantosmia」

Christophe Laudamiel. Phantosmia.

処方もまた、署名である。

クリストフ・ロダミエル「Phantosmia」:ニューヨークのディロン・ギャラリーで香りの彫刻を収めたビニールのテント


チェルシーの一週間

2012年1月、ニューヨーク、チェルシーのウェスト25丁目555番地にあるディロン・ギャラリーで、ちょうど一週間の展覧会が開かれた。1月25日から2月1日まで。名は「Phantosmia」。作者はクリストフ・ロダミエル。

ロダミエルは画家でも彫刻家でもない。調香師だ。アバクロンビー&フィッチのシグネチャーの香りを手がけた鼻であり、ラルフ・ローレンやトミー・ヒルフィガーの製品にも関わってきた。展覧会を取材した「Hyperallergic」は、彼を、芸術へ向かう香水業界の元ロックスター、と呼んだ。

展覧会は明快な宣言をした。香りは視覚や聴覚と並ぶ、それ自体ひとつの芸術形式である。服の添え物ではない。見えない化粧でもない。芸術だ。

それを示すために、ロダミエルは香りの彫刻と呼ぶ七つの作品を持ち込んだ。

七つの香りの彫刻、六つのテント

七つの題名。「At Your Own Risk」。「Fear」。「Fragile」。「The Last Virgin」。「The Monkey and the Banana」。「The Whip and the Orchid」。「Remembrance of Things Lost」。

ギャラリーは六つのビニールのテントを立て、匂いが混ざらないよう、それぞれにひとつの香りを置いた。七つ目の「Remembrance of Things Lost」にはテントがなかった。部屋の共有の空気を満たした。当時のある記録は、それをマレーネ・ディートリッヒへのオマージュと記している。

訪れた人は指示に従い、美術館風の解説を読み、それから一つひとつのテントに入った。「Hyperallergic」によれば、具象的な作品もあった。「The Monkey and the Banana」はほとんど説明がいらない。「The Last Virgin」のように、もっと曖昧なものへ漂う作品もあった。温かい記憶と、嗅ぐ人自身の期待。

ビニールのテントは注目に値する。台座であり、同時に壁でもある。絵画には光が要る。匂いには境界が要る。それがなければ七つの作品はひとつの雲に溶け合い、どの匂いがどの作品のものか、誰にもわからなくなる。

紙の上の処方

「Phantosmia」の最も印象的な行為は、テントの外で起きた。ロダミエルは七つの香りすべての処方を印刷して公開した。著作権保護の対象となるように。

調香の世界で、処方は最も固く守られる財産だ。当時の報道は、調香師が自らの処方を公開した初めての例と伝えた。ロダミエルはさらに「The Whip and the Orchid」の処方をパブリックドメインにするつもりだと語った。秘密に慣れた技の実践的な側面を開く、象徴的な身ぶり。

ここにはきれいな逆説がある。著作権は、安定したかたちに固定された作品を守る。匂いは固定されない。流れ去る。香りが作者のある作品と認められるには、ロダミエルはそれを紙の上の言葉と数字に変えなければならなかった。匂いは、認められるために文字を通らなければならなかった。

芸術家として語る調香師

ロダミエルは、ありふれたものについて語るのをためらわない。「Hyperallergic」に、柔軟剤が大好きだと語った。「Fragile」については、業界が冷蔵輸送の費用を避けるために本物のレモンの使用を制限していると説明した。こうした細部は、原料、費用、保管まで含めて、業界の内側から匂いを見る人の姿を示す。

彼は、訪れた人がこの展覧会を気に入ると確信していた。最も過小評価されてきた感覚に、ただ正当な評価を与えているだけだと語った。

同じ年の後半、「The Art of Scent」がニューヨークの美術館で開幕し、12の香水をその作者の名とともに並べた。「Phantosmia」はそれより小さく、短かった。ギャラリーでの一週間。けれどそれは調香師の側から来た。展示する香りを選ぶキュレーターではなく、調香師自身が、自分の作品の下に名前を署名した。