エッセイ · 写真
ダイアン・アーバス(Diane Arbus)。「A box of ten photographs」。
Diane Arbus. A box of ten photographs.
十を選ぶとは、何を外に残すかを決めること。
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十枚のプリント、ひとつの箱
1970年頃、ダイアン・アーバスはポートフォリオをつくり始めた。自分の仕事を最もよく表すと考えた十枚の写真を選び、それぞれを20 x 16インチのゼラチン・シルバー・プリントに焼き、十枚すべてを箱に収めた。
箱は透明なプレキシグラス製で、画家でありデザイナーであり、アーバスの親しい友人だったマーヴィン・イスラエルがデザインした。箱には何の装飾もない。白黒の写真を閉じ込めた、凍った水の塊のように見える。
アーバスは五十部のエディションを計画していた。1971年に亡くなったとき、焼き終えていたのは八組。生前に売れたのは四組だけ。リチャード・アヴェドンが二組を買った。一つは自分のため、一つは友人の映画監督マイク・ニコルズへの贈り物として。ジャスパー・ジョーンズが一組。四つ目は Harper's Bazaar のアートディレクター、ビー・フェイトラーの手に渡った。
四人の買い手、すべて内側の人。当時、写真家がプリントを芸術作品として売れるという考えはまだ新しかった。箱は静かな主張をしていた。これらの写真は記事の挿絵のためにあるのではない。それだけで立っている。
文のように長い題名
十枚の写真は1963年から1970年のあいだに撮られた。その題名はフィールドノートのように読める。Identical twins, Roselle, N.J. A young man in curlers at home on West 20th Street. A Jewish giant at home with his parents in the Bronx.
見過ごしてしまうほどありふれた場面もある。Xmas tree in a living room in Levittown. A family on their lawn one Sunday in Westchester. The king and queen of a senior citizens' dance.
アーバスの題名はほとんど解釈しない。誰が、どこで、ときにはいつ、を言うだけ。通りすがりの人が住所を書き留めるように。残りは見る人に委ねられる。
十枚の写真をあわせても、ひとつの物語は語られない。それは六十年代アメリカの断面。家族、ささやかな祝い、社会が自らに望んだ像の縁で生きる人々。
最後の仕事
「A box of ten photographs」は、アーバスが亡くなったとき取り組んでいた最後の仕事の一つだった。それは彼女がおそらく意図しなかった重みを帯びている。箱は、もう何もつくれなくなった時点で、彼女自身の手で並べられた作家自身の選択になった。
つくる人にとって、選ぶことは難しい。十を選ぶとは、どれほど良くても他のものは外に残ると決めること。アーバスはそれを誰にも任せなかった。自分で焼き、自分で選び、友人に箱のデザインを頼んだ。
のちにこの箱は、彼女の死後のキャリアの礎の一つとみなされるようになった。それはまた、写真を、収集され美術館に掛けられる本格的な芸術の位置へと動かす助けにもなった。残されたセットはいま主要なコレクションに収まり、完結した作品として展示されている。
けれど見る人の心に残るのは、おそらくその歴史ではない。透明な箱の前に立ち、中の十の顔が、長いあいだ、ごく近くからそれを見つめ、目をそらさなかった誰かによって選ばれたと知る、その感覚。