エッセイ · 写真

ジョエル・マイヤーウィッツ(Joel Meyerowitz)。「Morandi's Objects」。

Joel Meyerowitz. Morandi's Objects.

ひとりの画家のために、生涯ポーズをとりつづけた物たち。

ジョエル・マイヤーウィッツ「Morandi's Objects」:古く剥がれかけた壁を背に、ボローニャのアトリエに置かれたジョルジョ・モランディの物

©Joel Meyerowitz · Hyperallergic



フォンダッツァ通り36番地の部屋

ジョルジョ・モランディは、生涯のほとんどをボローニャ、フォンダッツァ通り36番地のアパートで暮らし、仕事をした。アトリエは小さな部屋で、寝室を兼ねていた。そこで彼は、二十世紀イタリア美術でもっともよく知られた静物画のいくつかを描いた。いくつかの瓶、いくつかの箱が、テーブルの上に寄り集まり、埃のようにくすんだ色をしている。

モランディは1964年に亡くなった。アパートはのちに小さな美術館 Casa Morandi として保存され、ほとんどの部屋はふだん一般には閉じられている。彼が描いた物は、いまもそこにある。

2015年の春、当時妻で作家のマギー・バレット(Maggie Barrett)とトスカーナに暮らしていたアメリカの写真家ジョエル・マイヤーウィッツは、その部屋で仕事をすることを許された。彼はモランディの物とともに過ごし、ひとつずつ撮影した。

ひとつずつ、古いテーブルの上で

マイヤーウィッツの方法は簡素だった。物をひとつ手に取り、手のなかで回し、それからモランディのテーブルの上に置いた。画家の跡がいまも残る、同じテーブルである。照明は持ち込まなかった。光は部屋の温かな自然光で、モランディの絵の影を落としたのと同じ光源だった。

物のリストは、思うより長い。花瓶、貝殻、顔料の瓶、絹の花、缶、漏斗、じょうろ。およそ300点。多くは埃をかぶり、欠け、色がくすんでいる。写真のなかでそれらは古い宝石のような落ち着いた色合いを帯びる。モランディの絵を見たことのある人なら、すぐにわかる色だ。高価なものはひとつもない。どれも、とても長いあいだ見つめられてきた。

その背後で、古い壁は剥がれかけ、コルタードのような乳白がかった茶色をしている。マイヤーウィッツは何も片づけず、何も拭わなかった。物は何十年も置かれていたそのままの姿で現れる。

彼は、仕事をしながら、ふとした認識のひらめきを待っていたと語っている。物のなかの何かが生きはじめたという感覚。そのときにシャッターを切った。

二つの見方が出会う

モランディは、物をその価値のために描いたのではない。ほとんどは日用品で、高価なものは何もなかった。彼はそれらを幾何学として使った。円、円筒、箱、長方形、楕円。マイヤーウィッツは、モランディの配置を、形どうしが引き合い押し合う力の場と表現する。

マイヤーウィッツ自身の写真は、別の道を歩んできた。彼はニューヨークのカラーのストリート写真と、ケープコッドの海辺の光でもっともよく知られている。ボローニャで、彼は速度を落とした。群衆も、過ぎていく瞬間もない。あるのはテーブル、ひとつの物、そして時間だけ。通りで瞬間を追うことに慣れた男が、小さな部屋でじっと座ることを選んだ。

これは絵画と写真の出会いである。モランディの絵を見る人は、すでに見られ、色と線に変えられた物に慣れている。マイヤーウィッツの写真は、それらを物に戻す。本物の埃、本物のひび、本物のラベルのついた瓶。そうして見る人は、モランディがそれらをどれほど変えていたかを、よりはっきりと見る。

本と、その増補

Damiani は2016年に写真を一冊の本として出版した。2026年4月、同じ出版社が増補版「Morandi's Objects: The Complete Archive of Casa Morandi」を刊行した。130点を超える写真が加わり、マイヤーウィッツとマギー・バレットのエッセイが収められている。

このシリーズは、ローラ・レティンスキーの食べ終えたあとのテーブルと並べて読むことができる。どちらも、家のもっともありふれた物のなかに美しさを探す。レティンスキーは、人が使い終えたあとの物を撮る。マイヤーウィッツは、それらを見つめた人が去ったあとの物を撮る。