エッセイ · 嗅覚アート

Polymorf の「Famous Deaths」。

Polymorf. Famous Deaths.

映像はない。最期の瞬間の音と匂いだけ。

Polymorf「Famous Deaths」:音と香りのインスタレーションに使われた、四つの金属製の遺体冷蔵庫の引き出し

© Polymorf · Polymorf(スタジオ公式サイト)



冷蔵庫に横たわる

「Famous Deaths」は、マルセル・ファン・ブラーケル、フレデリック・デュリンク、マーク・メーウェノールトによるオランダのコレクティブ、Polymorf のインスタレーションである。CMD Breda と AVANS University とともに開発された。

中心にあるのは四つの遺体冷蔵庫、遺体を収める金属の引き出しだ。引き出しひとつに、ひとつの物語。訪れた人が横たわると、引き出しが滑り込み、完全な暗闇のなかでひとりになる。

およそ四分間、ドキュメンタリーのサウンドスケープを聞き、それに合わせて時間を計った香りの連なりを嗅ぐ。スクリーンはない。映像もない。物語は一人称で進む。引き出しのなかの人が、死を迎えようとする人の位置に立つ。

規則は厳密だ。一度に最大四人、引き出しひとつに一人。11歳以上であること。各引き出しには非常ボタンがある。物語を一度選んだら、途中で変えることはできない。こうした事務的な細部が、作品の重さを物語る。これは遊びではない。

語り直される五つの死

物語は五人を扱う。ジョン・F・ケネディ、ホイットニー・ヒューストン、ウェールズ公妃ダイアナ、ムアンマル・アル=カダフィ、フィンセント・ファン・ゴッホ。いずれも報道で、本で、映画で、何度も語り直されてきた死だ。訪れる人のほぼ誰もが、すでにそのイメージを頭に抱えてやって来る。

Polymorf は、誰もがすでに「見た」死を選んだ。作品はその蓄えられた像に頼り、それを別のものに置き換える。目が働かないとき、知っているつもりだったものが奇妙になる。

ゴッホのエピソードはアムステルダムのファン・ゴッホ美術館の委嘱で制作され、作品は2016年にそこで展示された。同じ年、「Famous Deaths」はトライベッカ映画祭と SXSW を巡った。2017年にはアイントホーフェンの STRP ビエンナーレに登場し、2019年まで巡回を続けた。

映画祭に出たことには意味がある。「Famous Deaths」はドキュメンタリーと並んだ。映像のない一種の記録として。IDFA DocLab のインタラクティブ・ドキュメンタリーのカノンと、MIT の Moments of Innovation のカノンに選ばれた。

語りとしての匂い

香りの連なりをつくったのは、匂いの歴史の研究者カロ・フェルベークと、長く嗅覚を扱ってきた作家ペーテル・デ・クペレである。2015年、作品はアート・アンド・オルファクション・アワード(Art and Olfaction Awards)で、香りを用いた実験的作品に贈られるサダキチ賞を受けた。

映画では、映像が物語を導き、音がそれを支える。「Famous Deaths」では、匂いが映像の仕事をしなければならない。私たちがどこにいるのか、どんな空間か、どんな瞬間かを告げる。ひとつの匂いが来て、去り、次がその場を占める。匂いのひとつひとつが、ひとつの場面だ。

それには別種の書き方が要る。匂いは映像ほど素早く切り替わらない。鼻に残り、次へにじむ。つくり手たちは、物語がぼやけないよう、匂いがいつ現れ、いつ消えるべきかを決めなければならなかった。作品は、匂いが音楽のように時間のなかで作曲されうることを示す。

異国の匂いを運ぶペーテル・デ・クペレの植物を知る読者は、共通の関心に気づくだろう。匂いは、そこにないものを語るために組み立てられる。「Famous Deaths」でそこにないのは、最後の一秒にいる一人の人間だ。引き出しが滑り出ると、光が戻る。けれど這い出てくる人は、自分のものではない記憶を運んでいる。