エッセイ · 現代アート
ナム・ジュン・パイク(Nam June Paik)。「TV Garden」。
Nam June Paik. TV Garden.
画面が葉の隣で育つ庭。
Solomon R. Guggenheim Museum · Solomon R. Guggenheim Museum
電子の庭に入る
「TV Garden」はナム・ジュン・パイクが1974年につくったインスタレーションである。来場者は、ジャングルの一角のように生きた植物の茂る部屋に入る。葉のあいだに大小さまざまなビデオモニターが隠れ、地面から咲き出た花のように横たわっている。
どのモニターも同じテープを流す。パイクが1973年にジョン・J・ゴドフリー(John J. Godfrey)とつくったビデオ「Global Groove」。そのサウンドトラックが部屋を満たす。半分は音楽、半分は声で、画面のちらつきと並んで流れる。
作品を所蔵するニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館は、ここに入ることを、自然と科学の不気味な融合に出会うことだと述べる。植物が画面を半ば隠す。画面が葉を照らす。どちらも、もう一方の背景ではない。
Global Groove
「Global Groove」は密度の高いモンタージュだ。パイクは世界中の演者を渦巻く流れにつなぎ合わせた。踊り、音楽、顔、電子的に変えられた色。地球全体へ一度に放送する架空のテレビ局に似ている。
一台のモニターの上では、「Global Groove」はビデオ作品である。多くの画面に増やされ、植物のあいだに置かれると、別のものになる。視点はひとつではない。来場者は歩きまわり、同じ映像にここで、またあちらで出会う。一輪の花が、いくつもの隅で咲いているのを見つけるように。
ふだん居間でじっと座って見るテレビを、ここでは葉のあいだに探さなければならない。パイクは習慣を逆にした。彼はテレビを裏返したいと語っていた。「TV Garden」はそのひとつのやり方である。
テレビを芸術に入れた人
パイクはしばしばビデオアートの父と呼ばれる。1932年にソウルで生まれ、アジアからヨーロッパへ、そしてアメリカへ移った。土台は音楽とパフォーマンスで、早くから電子工学に関心をもっていた。1960年代半ばにニューヨークに来て、フルクサスの中心人物の一人になった。
フルクサスは日常の行為を芸術に変えた。1965年ごろのビデオ「Button Happening」で、パイクはただコートのボタンを留めては外す。彼は見る人が外に立つのではなく参加することを望み、作品に驚きを持ち込むのを好んだ。
彼は改造したテレビ、ライブ・パフォーマンス、地球規模の放送、シングルチャンネルのビデオ、インスタレーションに取り組んだ。のちに「Electronic Superhighway」のような、テレビをめぐるより大きな作品へ進んだ。21世紀の初めには、新しい彫刻の素材としてレーザー光に向かった。
建て直される庭
2000年、「TV Garden」はニューヨークのグッゲンハイムで「The Worlds of Nam June Paik」のために再び設置された。庭は絵のように固定しておけない。植物は植え直され、画面は並べ直されなければならない。設置のたびに、同じ考えをもつ新しい庭になる。
美術館は、「TV Garden」が没入型でサイトスペシフィックなビデオ・インスタレーションの新しい基準をつくり、その影響は数十年後のゲイリー・ヒル(Gary Hill)やビル・ヴィオラ(Bill Viola)の部屋規模の作品にも見られると記す。
五十年以上たって、「TV Garden」のテレビは骨董になった。植物はそのようには老いない。再設置のたびの植物は、いつもその年のものだ。だから作品はいつも二つの時間を同時に抱えている。画面の時間と、葉の時間。