エッセイ · 嗅覚アート

日本「組香道具一式」。

Japan. Incense Game Set.

香りは数えられない。だから数えるための札をつくった。

梨子地に金銀蒔絵で、波間に花を積んだ舟を描いた江戸時代の組香道具一式。札盆と道具を伴う

© Victoria and Albert Museum, London; Alexander Gift · Victoria and Albert Museum (V&A)



ひとつの集いを収める箱

ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(Victoria and Albert Museum)は、Room 45 に日本の組香道具一式を展示している。博物館は年代を江戸時代、1615年から1868年と幅広く示し、作者は記していない。1916年、Alexander Gift の一部として博物館に入った。

外箱は高さ約19 cm、ほぼ正方形。外側には、波間に浮かぶ花を積んだ多くの舟が、梨子地に金銀の蒔絵で描かれている。梨子地とは、梨の肌にたとえられる金粉を散らした地である。金具は徳川家の三つ葉葵の紋をかたどる。

中には硯箱、札を入れる盆、内盆、そして道具一式。すべてに定位置がある。箱は物を収めるだけではない。ひとつの集いの秩序を収めている。

小刀、台、槌、香炉

香木がどう扱われたかを最もよく語るのは道具である。V&A の記録には、香炉、割り台、槌、そして小刀二本(うち一本は鞘付き)が挙げられている。

香木は貴重だった。丸太をまるごと焚く者はいない。台に置き、小刀と槌で割って、一回分にちょうど足りるほどの小さなかけらにした。香炉はそのかけらを温める熱を保ち、かけらは香りを放った。

この四つの道具が示すのは、香が遊びである前に、素材の修練だったということ。どれだけ割るか、どれだけ温めるか、どれほどの熱で。少し行き過ぎれば木は焦げて煙になり、匂いはすっかり変わる。

硯箱には専用の場所がある。上段には中村蠡平(Nakamura Reihei)の銘がある硯と、部分鍍金の小さな銀の水滴。墨は書くことを意味する。書くことは記録を意味する。

百四十四枚の象牙の札

札盆は最も洗練された部分である。十二の小箱に144枚の象牙の札が収められている。小箱には金銀で、花の菱文のなかに菊紋が描かれている。蓋にはそれぞれ十二支の動物がひとつ。象牙の札には金蒔絵の印がある。

硯箱の下段には、もうひと揃いの札がある。磨いた木の札五枚を一組とする十二組で、金で文字が書かれている。

十二の箱、十二の動物、十二の組。どうやら聞き手ひとりひとり、あるいは席ひとつひとつが、動物で示されたらしい。当てるとき、聞き手は口をきかなかった。札を箱に入れた。結果は声からではなく、札から読まれた。

この仕組みは部屋を静かに保つ。誰も隣の答えに揺さぶられない。鼻はそれぞれ、ひとりで働く。

収集から遊びへ

V&A はその歴史を短く伝える。香の鑑賞は室町時代に始まり、香木はアジア大陸から輸入され、愛好家に集められた。江戸時代には遊びの人気が頂点に達し、このような道具一式が作られた。

博物館が記す遊び方はこうだ。四種の香を選び、焚くのは三種だけ。客はまず試香を聞き、それから焚かれた香をそれぞれ当てるか、焚かれなかった四つ目を当てるかを競う。選んだ答えを示すために象牙の札を箱に入れ、答えは紙に書き記される。

ニューヨークでは、篤姫の十種香道具がひとつの婚礼の物語を語る。ロンドンの道具一式は、遊びそのものの物語を語る。どう組み立てられ、数えられ、記録されたか。

これを見ると、珍しいものが見えてくる。鼻のために投票の仕組みをつくるほど真剣な文化。曖昧で私的だとよく言われる香りが、規則と得点と記録のある盤の上に置かれている。