エッセイ · 現代アート

オマー・ファスト(Omer Fast)「CNN Concatenated」。

Omer Fast. CNN Concatenated.

どの単語も本物。その文は一度も語られていない。

オマー・ファスト「CNN Concatenated」。一語を話している途中のテレビのニュースキャスター

Tate · Tate



一度に一語

「CNN Concatenated」は、アーティストのオマー・ファストが2002年に制作したシングルチャンネル・ビデオ。素材は CNN のテレビニュース。だがファストは放送をそのまま使わない。できる限り小さな断片に切り分ける。単語ひとつずつに。

どの単語もニュースキャスターが話している。ある女性が一語を言う。ある男性が次の一語を言う。それからまた別の誰か。顔、髪型、背景の色、声が、一語ごとに絶えず入れ替わる。

ファストはそれらの単語を並べて新しい独白をつくる。どのキャスターもそれを言ったことはない。それでもその中のどの単語も、彼らが実際の放送で、電波に乗せて話したもの。

題名の Concatenated は、鎖のように一つずつ連結された、という意味の専門用語。題名は、この映像がどうつくられたかをそのまま言い表している。

テレビの言語

ニュースキャスターは画面の中でもっとも訓練された話し手。平らで明瞭で中立な声。落ち着いた顔。すべては、耳にするものが意見ではなく情報だと視聴者に信じさせるよう整えられている。

「CNN Concatenated」はその信頼性を使って逆のことをする。信頼された声も、切り分けてつなぎ直せば何でも言わせられると示す。偽造する単語は一つもいらない。変わるのは順序だけ。

見る者は奇妙な位置に置かれる。目は見慣れたニュースの顔を見る。耳は意味の通る文を聞く。頭はその文が存在しなかったことを知っている。そのずれこそ、作品が働く場所。

作品が現れたのは2002年。ニュース専門チャンネルが一日に何時間も放送し、キャスターの顔がほとんどどの居間にもあった頃。その声が届く範囲の広さが、それを分解することをいっそう際立たせている。

アーティストと既存の素材

オマー・ファストはエルサレムに生まれ、ベルリンで暮らし制作している。作品の多くは、物語が映像を通してどう語られ、語り直され、組み立て直されるかを扱う。彼の関心は、起きたことと、それがどう語られるかのあいだの隙間にある。

「CNN Concatenated」で、彼は何も撮影していない。すべての映像はすでに存在し、放送され、見られていた。彼の仕事は選び、切り、並べること。この作品は監督の仕事より編集者の仕事に近い。

この方法は芸術に深い根を持つ。コラージュ。20世紀初頭のアーティストたちは新聞から言葉を切り抜いて詩をつくった。ファストは同じことを映像で行う。ただし単位はもっと小さく、作業ははるかに根気がいる。一語ずつ探し出し、もとの文から取り出し、正しい位置に置かなければならない。

10年以上のちに、ユリアン・ローゼフェルトも「Manifesto」で既存の言葉を切ってつなぎ直した。こちらは芸術のマニフェスト。どちらの作品も同じことを問う。言葉が話し手を離れたあと、それは誰のものか。

なぜ記憶する価値があるのか

いまでは声や映像を切ってつなぎ直すことははるかに容易だ。機械は数分で、誰かに言ったことのないことを言わせられる。「CNN Concatenated」はそのすべての前に、手で、一語ずつつくられた。いま読むと、早すぎた警告のようだ。

だが作品は偽造だけについてのものではない。言語がもともと組み立てられたものだということも示す。私たちが話すどの文も、ほかの誰かが以前に言った言葉を使っている。私たちが変えるのは順序だけ。

見る者は新しい習慣を持って帰る。ある文を聞いて、その言葉がここに届くまでにいくつの口を通ってきたのかと考える習慣。

この映像作品はテート(Tate)のコレクションに収蔵されている。