エッセイ · 現代アート
ローザ・バルバ「The Hidden Conference」。
Rosa Barba. The Hidden Conference.
収蔵庫の作品は、まだ生きている。
Tate · Tate
三つの美術館、三つの収蔵庫
「The Hidden Conference」は、ローザ・バルバが2010年から2015年にかけて制作した三本のフィルムからなる作品。どのフィルムも、ヨーロッパの美術館の収蔵室で撮影された。展示されていないあいだ、作品が保管される場所である。
一本目「About the Discontinuous History of Things We See and Don't See」は2010年、ベルリンの新ナショナルギャラリーの収蔵庫で撮影された。二本目「A Fractured Play」は2011年、ローマのカピトリーニ美術館の収蔵庫で。三本目「About the Shelf and Mantel」は2015年、ロンドンのテートの収蔵庫で撮影された。
三つの都市、まったく異なる三つのコレクション。ベルリンの近代美術の美術館。ローマで最も古い公共美術館のひとつで、古代彫刻を数多く収める館。ロンドンの国立コレクション。共通するのは壁の上ではなく、壁の裏にあるもの。来館者のいない部屋。ラックと木箱と額で埋まっている。
作品はテートのコレクションに収められている。2023年には三本のフィルムがそろって、テート・モダンの地下にある元石油タンク、ザ・タンクスで上映された。それ以前には2015年にミラノのパラッツォ・クザーニで、2019年と2020年にイスタンブールの ARTER で展示された。
登場人物としての絵画と彫刻
バルバはデジタル映像ではなく35mmフィルムで制作する。展示室では三台のドレスデン D1 映写機が同時に回り、それぞれが一本ずつ、カラー、ステレオ音声で映す。機械の音も空間の一部である。フィルムのリールは、重さと長さと音をもつ物である。
三本のフィルムは長さが異なるため、同時に始まることも終わることもない。ある一本の語りや環境音や沈黙が、ほかの二本に重なり、その組み合わせはたえず移り変わる。観者は三つの投影のあいだに立ち、招かれていない会話を聞くように耳を澄ます。
画面のなかで、収蔵された作品は動いているように見える。テートはそれを、見えない車輪で滑っていると表現する。絵画や彫刻は、もう見られるために掛けられた物ではない。登場人物になる。現れ、退き、どの学芸員もつくらなかった配置で互いに並び立つ。
題名がそれを示している。会議、ただし隠された会議。参加者は美術作品。議事録をとる者はいない。
美術館が見せない部分
大きな美術館は、ふつう所蔵品のごく一部しか見せない。残りは収蔵庫にある。番号を振られ、包まれ、一定の温度と湿度に保たれて。待っている。数か月で再び掛けられる作品もある。何年も待つ作品もある。
バルバが関心を寄せるのは、その待機の状態である。展示室では、作品はひとつの物語のなかに置かれる。運動によって、年代によって、主題によって。収蔵庫では物語が止まる。近代の絵画が空の木の額の隣にあるかもしれない。古代の像がレンズに背を向けているかもしれない。それらがどう見られるべきかは、まだ誰も決めていない。
バルバのカメラは、そのどれも並べ替えない。ただ通り過ぎる。収蔵庫の偶然の隣人たちが、自ら姿を見せるにまかせる。だから一本目の題名は、見るものと見ないものの不連続な歴史を語る。美術館は私たちに一部を見せる。もう一部もまだ存在している。ただ視界の外にあるだけ。
35mmを選ぶことも、同じ話に属している。フィルムのリールもまた、収蔵庫に置かれうるものである。手入れを必要とし、褪色しうるし、映されるのを待つ。バルバは、撮るものと同じ運命を分かち合う素材を使う。
なぜこの作品は残るのか
ローザ・バルバはイタリア生まれの作家で、ベルリンを拠点に活動する。フィルムを彫刻的な素材として扱うことで知られる。映写機、リール、光、音のすべてが形の一部になる。「The Hidden Conference」では、その考え方が、それにごく近い主題と出会う。物を保管する場所としての美術館である。
美術館にカメラを向けた作家は多い。カンディダ・へーファーは来館者が去ったあとの展示室を撮る。絵の前の来館者を撮る者もいる。バルバはもう一歩進む。来館者が通れない扉を抜け、誰のためでもなく演じている作品を見る。
あとに残るのは一枚の像ではない。規模の感覚である。展示室の壁の裏には、いつももうひとつの部屋がある。もっと満ちて、もっと暗く、もっと静かな部屋が。そこでも作品は作品のまま。見られていなくても。
「The Hidden Conference」は素朴な問いを投げかける。物は存在するために見られる必要があるのか。三本のフィルムは答えないことで答える。ただ、まだそこにあるものを映すだけ。