エッセイ · 近代美術
ソニア・ドローネー、ブレーズ・サンドラール「La Prose du Transsibérien et de la petite Jehanne de France」。
Sonia Delaunay, Blaise Cendrars. La Prose du Transsibérien et de la petite Jehanne de France.
色で聴く詩。
高さ2メートルの本
1913年のパリで、詩人ブレーズ・サンドラールと画家ソニア・ドローネーは、ほかに類のない本をつくった。文字と絵が一枚の紙に刷られ、アコーディオンのように22のパネルに折り畳まれる。すべて広げると高さはおよそ2メートル、幅は40センチ足らず。
各パネルは右に詩の一部、左にドローネーの水彩を載せる。色はほとんど抽象で、色面と弧を描く筆致からなり、柔らかなパステルから藍、朱、紫、黄、緑まで広がる。色は右側にもこぼれ、詩節のあいだの隙間を埋める。
サンドラールの詩は活版で、さまざまな色、大きさ、書体で刷られた。いちばん上、題名の上には赤で刷られた地図があり、鉄道の経路をたどる。
本はサンドラールが自費で営んだ出版社 Éditions des Hommes Nouveaux から刊行された。その大きさゆえ、すべて広げたときにしか本として読めない。今日ではたいてい、ガラスケースに広げて置かれるか、壁に掛けて展示される。テート(Tate)は1980年に所蔵品を購入した。
列車と、戻ってくる問い
詩は自由詩で、シベリアを横断する鉄道の上での語り手の思いと印象を追う。そのリズムは揺れる。列車のように、窓の外を過ぎる死と廃墟と貧困の光景のように。
その合間に、ひとつの問いが何度も挟まる。詩人の連れ、ジャンヌの問い。ブレーズ、モンマルトルからはとても遠いの? 答えは一度も返らない。ただ、郷愁のリフレインのように戻ってくる。
最後の部分はパリとその賑わいへ戻る。芸術、小説、カフェ、そして近代生活の二つの大きな象徴、エッフェル塔と大観覧車。ドローネーの色のなかで、具象的な像はこれだけ。塔はドローネー家になじみの主題だった。夫ロベール・ドローネーの絵にもあるように。
挿絵ではなく、同時に
作者たちはこれを最初の同時的な本と呼んだ。この言葉は、ソニアがロベール・ドローネーとともに展開した理論、シミュルタネイスム(同時主義)につながる。ある色どうしを並べ、調和した叙情的な効果、さらには動きの感覚を生み出す考え。
サンドラールが動きを言葉にしようとしたように、ドローネーは対比する色と躍動する形で動きを求めた。彼女の部分は詩を語り直さない。文字と同時に見られるための、等価物。二人自身の言によれば、彼女は詩が朗読されるのを聴きながら、それを色へ書き写した。
ドローネーはウクライナに生まれ、パリの前にロシアとドイツで暮らし、いくつもの言語を難なく話した。言語の限界を知っていたからこそ、国境のない、国を越える絵の言語という考えに惹かれた。彼女にとって色は、言葉が言えないことを言えるものだった。
エッフェル塔の高さ
作者たちは150部の刊行を計画した。すべてを縦に並べれば、エッフェル塔の高さに届くはずだった。計画は実現しなかった。刷られたのはおよそ60部だけ。
それでもこの本は大きな反響を呼んだ。パリの前衛がもっとも熱かった時期、フォーヴィスム、キュビスム、オルフィスムのただなかに現れた。いまでは20世紀のアーティストブックの記念碑とみなされている。
「La Prose du Transsibérien」は、始めから終わりへ、上から下へと追って読むしかない。長い紙は目にある距離を旅させ、私たちは自分もまた動いていることに気づく。ドローネーは生涯、絵の言語を探りつづけた。絵画、テキスタイル、服、本、ポスター。言葉と色をこれほど近づけた作品は多くない。