エッセイ · 写真
ソフィ・カル「The Sleepers」。
Sophie Calle. The Sleepers.
ベッドは、そこに横たわった誰もを覚えている。
Fraenkel Gallery · Fraenkel Gallery
8時間の眠り
1979年、ソフィ・カルは人々に、8時間分の眠りを貸してほしいと頼んだ。パリの彼女のアパルトマンに来て、彼女のベッドで眠る。8日間続けて、部屋が空になることは一度もない。
27人が応じた。友人、知人、そして見知らぬ人も。それぞれが自分の番に来て、8時間眠り、次の人が横になるために去った。ときには番が重なり、見知らぬ二人がベッドのそばですれ違った。
カルはずっとそこにいた。1時間ごとに写真を撮った。座って客たちの眠りを見つめ、仕草や寝返り、それぞれの番に起きたことを書きとめた。
眠る人は撮影されることを知っていた。けれど眠ってしまえば、自分がどう見えるかはもう制御できない。
写真は時間ごとに、言葉は人ごとに
作品は眠った人ごとに示される。一人ひとりが、白黒のゼラチン・シルバー・プリントの組と、並べられたテキストパネルになる。パネルには名前かイニシャル、順番の中での位置、その番のあいだにカルが記録したことが書かれている。
フレンケル・ギャラリー(Fraenkel Gallery)はこうした組をいくつも展示してきた。5番目に眠った人は8枚。12番目は6枚。19番目は5枚。組ごとに長さとリズムが違う。どの眠りも、言葉のない短い物語であるかのように。
写真はふつうの意味で美しくはない。記録。同じベッド、同じアングル。変わるのは眠る人と姿勢だけ。並べると、肖像の組というより夜警の日誌に近い。
初期の作品
「The Sleepers」はカルの最初期の作品のひとつ。のちに彼女が追うものの多くがすでにここにある。他人への好奇心、前もって決めたルール、写真と言葉を並べる記録、そして観察と侵入のあいだのぼやけた境界。
2年後、彼女は「The Hotel」で逆へ向かった。ヴェネツィアで客室係として働き、客が出かけているあいだにその持ち物を調べた。「The Sleepers」では他人が彼女の空間に入る。「The Hotel」では彼女が他人の空間に入る。
二つをつなぐのはベッド。家の中でもっとも私的な場所であり、人が知らないうちにもっとも多くの痕跡を残す場所。
占められた空間
ベッドはふつう一人か二人のもの。「The Sleepers」はそれを8日間、公共の空間に変える。ひとつの体に温められ、次の体に引き継がれ、ほとんど冷めることがない。
ベッドは作品の中でただひとつ変わらない登場人物。人は来ては去り、光は時刻とともに変わり、昼は夜になる。ベッドだけがとどまり、あらゆる体、あらゆる姿勢、あらゆる息を受けとめる。
小さな細部がひとつ重みをもつ。カルのルールは一人8時間だった。ひとつの番が終わると、次が始まる。自然で、測られることのない眠りが、勤務時間のように規則正しい番に切り分けられる。ベッドは時間が入り時間が出ていく小さな機械のように動き、その上の人々はただ眠っている。
いま「The Sleepers」を見ると、眠りがどれほど私的なものかを考えるかもしれない。私たちは眠っている自分をほとんど見ない。ごく近い人を除けば、眠っている他人もほとんど見ない。カルは27人にそれを見せてほしいと頼み、1時間ごとに一枚を残した。