エッセイ · 写真

タリン・サイモン「An American Index of the Hidden and Unfamiliar」

Taryn Simon. An American Index of the Hidden and Unfamiliar.

実在する。けれど見えない。

タリン・サイモン「An American Index of the Hidden and Unfamiliar」。ホイットニー美術館の壁に、長いキャプションとともに並ぶ大きなカラー写真

Whitney Museum of American Art · Whitney Museum of American Art



視界の外にあるものの目録

タリン・サイモンは1975年生まれ。写真と文章で制作するアメリカのアーティスト。「An American Index of the Hidden and Unfamiliar」は、自国を写真でたどった目録だ。ニューヨークのホイットニー美術館が2007年3月9日から6月24日まで展示した。

題名がほとんどすべてを語っている。これは目録だ。対象は、アメリカ国内に存在する場所、物、手続き。国の日々の営みと深く結びついていながら、一般の人は立ち入れないか、存在すら知らない。

サイモンはそれらを、社会のなじみ深い領域ごとに分ける。科学、政府、医療、娯楽、自然、安全保障、宗教。どの領域にも閉ざされた部屋がある。サイモンはその部屋にカメラを持ち込む方法を見つけた。

放射性カプセルから冬眠する熊まで

「Index」の対象は実に幅広い。核廃棄物貯蔵施設の放射性カプセル。冬眠中のツキノワグマ。ラングレーの中央情報局本部。そこで CIA は独自の美術コレクションを持っている。

並べてみても、見た目に共通するものは何もない。ひとつは危険で、ひとつは眠り、ひとつは守られている。共通点はただ、実在し、隠されていることだけ。

サイモンは条件が許すかぎり、大判のビューカメラを使った。遅く、重く、据えるのに時間がかかる。そのかわり、細部まで鮮明で、静かで、ほとんど冷たい写真になる。詮索するレンズも、盗み撮りもない。どの一枚も、すべての許可が下りたあとに撮られたように見える。

その静けさが奇妙な効果を生む。サイモンの写真の秘密は、秘密に見えない。倉庫に並ぶ品物のように、帳簿に記入されるのを待っている。

写真とキャプション

「Index」の写真には、どれにも一節の文章が添えられている。短いラベルではなく説明だ。これは何か、どこにあるか、なぜ存在するのか。調子は乾いて正確で、参考書の項目に似ている。

ここでは写真と文章が別々の仕事をする。写真は表面を見せるが、表面はめったに多くを語らない。部屋、棚、机の上の物。文章は、その部屋が何のためにあり、物がどこから来たかを告げる。見る者は行き来し、その往復のなかで何かをつかむ。物を見ることは、まだそれを知ることではない。

2007年、Steidl が「Index」を本として刊行した。序文はサルマン・ラシュディ。作品はフランクフルトの Museum für Moderne Kunst でも展示された。サイモンはその後の多くのプロジェクトでもこの方法を使い続ける。いつも像と文章を組み合わせ、いつも人がめったに目を向けない仕組みを探す。そのひとつは花を証人とする。「Paperwork and the Will of Capital」。

だから「An American Index」は、見ることの境界についての作品だ。どの国にも隠された場所がある。サイモンは記者のようにそれを暴かない。司書のように列挙し、見せられたものと、実際に身のまわりで動いているものとの距離を、見る者自身に測らせる。