エッセイ · 写真
アンドレアス・グルスキー「99 Cent」
Andreas Gursky. 99 Cent.
物が多すぎて、どれも見られていない。
提供:Matthew Marks Gallery, New York;© Andreas Gursky / Artists Rights Society (ARS), New York · SFMOMA
ロサンゼルスの均一価格店
1999年、アンドレアス・グルスキーはロサンゼルスの99セント・ストアの店内を撮影した。ほぼすべての品が同じ値段で売られる種類の店だ。完成した作品は大きなカラープリントで、高さ約2メートル、長さ3.5メートルを超え、アクリルに表面マウントされている。
SFMOMA のプリントは Doris and Donald Fisher Collection に属し、207×336.6センチメートル。この大きさになると、絵として眺めるのではない。壁の前に立つように、その前に立つ。
写っているのは、商品で埋まった平行な通路。鮮やかな色の菓子、小さなプラスチックのおもちゃ、使い捨ての品々。光沢のある天井が通路を映し返し、色が上へあふれ出るように見える。買い物客も何人かいるが、小さく、床に沈んでいる。
写真から面へ
グルスキーは、シャッターを押してそのまま焼くのではない。1990年代初めから、デジタル処理で画像を組み立て直してきた。つなぎ合わせ、遠近を調整し、画面のどこも同じ鮮明さにする。「99 Cent」もそうして処理された画像である。
その結果、焦点のない空間が生まれる。ふつうの写真では、近いものは大きくはっきり、遠いものは小さくぼやける。ここでは通路の奥の品が手前の品と同じくらい鮮明だ。目の休む場所がない。
離れて見ると、画面はほとんど抽象になる。繰り返される水平の色の帯、ストライプの絵画のように。近づくと、何千もの個別の包装に分かれる。それぞれにラベル、色、文字がある。二つの見え方が一枚の面に同居している。
ベッヒャー教室から
アンドレアス・グルスキーは1955年にライプツィヒで生まれ、デュッセルドルフで育ち、デュッセルドルフ芸術アカデミーでベルント・ベッヒャー(Bernd Becher)に写真を学んだ。師から受け継いだのは、正面から、距離をとり、声を上げないまなざし。ベッヒャー夫妻の給水塔の背後にあるまなざしである。
だがグルスキーは、そのまなざしを別の世界へ向けた。ベッヒャー夫妻は消えゆく産業構造物を、白黒で、控えめな大きさで撮った。グルスキーはグローバル経済の働く場所を撮る。証券取引所、工場、港、店。写真はカラーで、美術館の絵画ほどの大きさがあり、しばしば上から見下ろされる。
二人に共通するのは反復だ。ベッヒャー夫妻は多くの給水塔を並べて比べた。グルスキーは一枚の画面の中に反復を見つける。人の列、機械の列、棚の列。「99 Cent」では、反復そのものが主題である。
消費の絵
美術館はこの作品を消費文化へのまなざしとして紹介する。商品はきちんと並べられ、買われるのを待ち、背後の連鎖を静かに指し示す。大量に物をつくる工場、海を渡るコンテナ、倉庫、そしてようやくこの棚。
グルスキーは何も言わない。スローガンも、皮肉なキャプションもない。写真は美しい。とても美しい。その美しさこそが少し落ち着かなさを誘う。過剰は、十分に遠くから見れば、芸術作品のように見える。
二十五年以上たった今も、この光景は見慣れている。同じ商品で埋まった通路、買われて忘れられる物。「99 Cent」は、買うべきかどうかを問わない。ただ全景を見せ、その色の壁の前に立つ人に問いを委ねる。