エッセイ · 現代アート

アーニャ・ガラッチオ「preserve 'beauty'」

Anya Gallaccio. preserve 'beauty'.

花は保たれない。最後まで行くことを許される。

アーニャ・ガラッチオ「preserve 'beauty'」。何千もの赤いガーベラが、壁に据えた4枚の大きなガラスパネルの奥に平たく押し当てられている。

Tate · Tate



赤い花の壁

「preserve 'beauty'」は、壁に並べて据えられた4枚の大きな透明ガラスから成る。ガラスの奥には、中心が黒っぽい赤いガーベラが列をなし、一層に押し当てられている。花の頭は見る者の方を向く。茎は下を向き、各パネルの下端には緑の帯ができる。最下段の茎だ。

テートでの展示では、壁は幅5メートル以上、高さ3メートル以上になる。花の数は花の大きさによって変わり、ふつうは1,600本から2,000本のあいだ。

花は 'Beauty' という名で売られる交配種のガーベラ。引用符に入ったこの語は、品種名であり、同時に言葉遊びでもある。作品は美を保存すると言う。そして、その美が皆の目の前でしおれるにまかせる。

朽ちるために作られる

1963年生まれのアーニャ・ガラッチオは、1991年、ロンドンのギャラリー、カーステン・シューベルトのウィンドウのためにこの作品を初めて制作した。そのときは800本の花を、ギャラリーの窓と1枚のガラスのあいだに挟み、通りを行く人々に向けて外向きに並べた。

花は死ぬから、作品はひとつの形では続かない。1991年以来、ガラッチオは何度も、さまざまな場所でこれを作り直してきた。そのたびに新しい花で。

テートは設置の手順を詳しく記録している。ガラスパネルを床に平らに置く。花を列に並べ、デンタルフロスで裏に結ぶ。パネルをすばやく起こして壁に固定し、花を留められるだけの力で押さえる。フロスを切って引き抜く。花は残り、ガラスだけに支えられる。

展示のあいだ、花は乾き腐るにつれて縮むため、パネルの調整が必要になる。床に落ちる花もあり、そのまま分解が続くにまかされる。展示が終わると、花はすべて捨てられる。

商品としての花

ガラッチオは、有機的で朽ちやすい素材をよく使う。氷、花、果物、砂糖。別の作品「Stroke」では、壁をチョコレートで覆った。テートの解説によれば、「preserve 'beauty'」は花をめぐるロマンティックな観念と、自然と私たちの関係に異を唱える。彼女は切り花を、大量生産される使い捨ての商品と呼んだ。

2,000本の花をガラスの奥に置くことは、それを正面から見るひとつの方法だ。ガーベラの一本一本が、育てられ、切られ、箱に詰められ、運ばれた。花屋では花瓶で数日を過ごし、ごみ箱へ行く。ここでも同じ短い生を送る。けれど醜くなっても、誰も取り除かない。見る者は、ふだん目を向けないその生の一部と向き合わざるをえない。

赤は暗くなり、やがて茶色になる。花びらは丸まり、平たくなり、ガラスに貼りつく。匂いも変わる。テートは、訪れる人が匂いを通して作品に出会うと記す。展示からどれだけ経ったかによって、摘みたての花か、腐りゆく花か。

素材とのパフォーマンス

ガラッチオは自らの仕事を、自分と素材のあいだのパフォーマンスと呼ぶ。限られた命のあいだに見に来る人々との協働だとも語る。「preserve 'beauty'」の全体を見る人はいない。訪れる人はそれぞれ、その一区間にだけ出会う。

テートは2004年、匿名の寄贈者からの贈り物としてこの作品を受け入れた。美術館が所有しているのは、厳密には物ではない。方法だ。花の品種、数、結び方、起こし方、そして死ぬにまかせよという指示。展示のたびに作品は生まれ直し、その道のりを最後までたどる。

だからこそ心に残る。持ち帰れる静止した像を、見る者に与えない。与えるのは、ひとつの時間の幅と、そのなかで変わっていく匂いだ。