エッセイ · 近代美術

ロマン・オパルカ「Détail 1520432 to 1537871」。

Roman Opałka. Détail 1520432 to 1537871.

数えることは、いちばんゆっくりした生き方。

ロマン・オパルカ「OPALKA 1965/1 ∞ Détail 1520432 to 1537871」:灰色の地に小さな手書きの白い数字の列で覆われたキャンバス

Solomon R. Guggenheim Museum · Solomon R. Guggenheim Museum



1965年に始まった数え

1965年、ワルシャワで、画家ロマン・オパルカは暗いキャンバスの左上の角に数字の1を描いた。次に2。次に3。小さな筆と白い絵具で、左から右へ、上から下へ、キャンバスが埋まるまで書いた。

それから同じ大きさの新しいキャンバスをとり、続きの数を書いた。2011年に亡くなるまで、彼はそれを続けた。

プロジェクト全体にはひとつの名前がある。「OPALKA 1965/1 to infinity」。一枚一枚のキャンバスは「Détail」、つまりその全体の細部と呼ばれる。各作品の題は、そこに書かれた最初と最後の数にすぎない。

ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(Solomon R. Guggenheim Museum)のコレクションにある作品の題は「OPALKA 1965/1 ∞ Détail 1520432 to 1537871」。百五十二万四百三十二に始まり、百五十三万七千八百七十一で終わる。一万七千を超える数が手で書かれ、ひとつも飛ばされていない。

淡くなっていく地

はじめ、オパルカは黒の上に白い数を書いた。のちに灰色へ移った。1970年代初めからは、新しいキャンバスごとに地に少しずつ白を足しはじめた。どの絵も前の絵よりわずかに明るい。ほとんど気づかないほどに。

結果は彼が計画したとおりのものだった。年月とともに地は白に近づき、その上の白い数は読みにくくなっていく。終わりのころには、数と地はほとんど溶け合う。書き手は書きつづけるが、書かれたものは表面の中に消えていく。

「Détail」の前で、見る人はたいてい数を読まない。目に映るのは、密に織られた布のようにかすかに震える灰色の面。近づいてはじめて数が浮かび上がり、それとともに、どの一筆も過ぎ去ったひとときだという感覚が現れる。

声と顔

オパルカは数を書くだけではなかった。描きながら、ひとつひとつの数をポーランド語で声に出し、録音した。その落ち着いた声は、キャンバスと並んで走る記録だ。同じ数え、息でできたもの。

制作を終えるたびに、彼は描きかけのキャンバスの前で自分を撮影した。同じ構図、同じ淡いシャツ、同じ無表情で。何百枚ものそうした写真を並べると、顔が老い、髪が白くなっていくのが見える。とてもゆっくりと。

三つの記録が連れ立って進む。キャンバスの上の数、テープの上の声、フィルムの上の顔。それらは同じもの、身体を通り過ぎていく時間を、三つの異なる感覚で記録している。

忍耐の芸術

オパルカは、システム、規則、繰り返しを使って作品をつくった1960年代と1970年代の芸術家の世代に属していた。けれど作品を自分の人生にこれほど固く結びつけた人は少ない。プロジェクトに完成の日付はなかった。止まれるのは、画家が止まるときだけだった。

同じ年月に、河原温は日付と起床時刻を芸術に変えた。「I Got Up」のように。二人は別々の道をとった。河原は一日の目印を記録した。いつ起きたか、どこへ行ったか、誰に会ったか。オパルカは出来事をまったく記録しなかった。ただ数えた。存在することそのものが、十分なしるしであるかのように。

今日「Détail」を見ても、物語は見えない。見えるのは、密で、均質で、手でつくられた、本物の時間の幅。そしてどこかに、その直前に描かれた絵と直後に描かれた絵が存在していることを、人は知っている。