エッセイ · 嗅覚アート
バールティ・ラルワニ(Bharti Lalwani)。「Bagh-e Hind: Scent Translations of Mughal and Rajput Garden Paintings」。
Bharti Lalwani. Bagh-e Hind: Scent Translations of Mughal and Rajput Garden Paintings.
絵の中の庭は、もう一度嗅ぐことができる。
提供:Bharti Lalwani / Hyperallergic · Hyperallergic
遠くから見る者
バールティ・ラルワニはロンドンのセントラル・セント・マーチンズとサザビーズ・インスティテュートで学んだ。香りに取り組む前は、西アフリカの会社で何年も絨毯をデザインし、その後、東南アジアの現代アートについて批評を書いた。絨毯、言葉、そして匂い。三つの素材、一つの習慣。表面をじっと見つめ、それが何を運んでいるのかを問うこと。
「Bagh-e Hind」の出発点は、ニューヨークのメトロポリタン美術館にある小さな絵だった。皇帝シャー・ジャハーンと息子ダーラー・シコー。1620年頃にナンハが描いた、シャー・ジャハーン・アルバムの一葉である。多くのインド宮廷絵画と同じく、それはとうの昔に亜大陸を離れ、いまは西洋のコレクションの中にある。
南アジアの人々にとって、これらの絵は自分たちの遺産だ。それなのに出会う方法といえば、たいてい美術館のウェブサイト上のデジタル画像である。ラルワニはそこから問いを立てた。これらの物に触れる道がいつも画面越しなら、もっと近づける別の方法はないのか。
彼女は三年をかけてプロジェクトを練り上げ、自費で資金をまかない、2018年にバーチャル展覧会として「Bagh-e Hind」を立ち上げた。名前はインドの庭を意味する。
五つの絵、五つの香り
2021年、歴史家ニコラス・ロートが共同キュレーターとして加わった。ハーバード大学で南アジア研究の博士号を取り、ムガルの庭園文献を専門とする人物だ。彼の参加によって、プロジェクトの絵の読み方が変わった。庭の植物は一つひとつが装飾以上のものである。名前があり、季節があり、当時の詩や園芸書の中に居場所がある。
2022年7月、プロジェクトは実際の部屋に入った。ロサンゼルスの Institute for Art and Olfaction、7月15日から8月12日まで。17世紀と18世紀の庭園画五点が選ばれ、それぞれに香水、お香、石鹸が一つずつ組み合わされた。
五つのテーマは、バラ、水仙、煙、アイリス、そしてケウラ。ケウラはタコノキの一種で、その香り高い花は南アジアの台所や寺院でなじみ深い。一枚は、1750年、グラブ・バーリーのバラ園で花の祭りに臨むマハーラーナー・ジャガト・シング2世を描き、いまはメルボルンのヴィクトリア国立美術館にある。一枚は花火を眺める貴族。一枚はアーサー・M・サックラー・ギャラリーの「Kamod Ragini」。ハーバード大学の美術図書館からは17世紀初めの庭の場面、ボストン美術館からは謁見する王子の絵。
お香と石鹸はラルワニが作った。香水は独学の調香師 Miss Layla が調合した。それらは一つとして同じもののない吹きガラスの瓶に収められた。プロジェクトには食べられる香水、ラルワニが共感覚ボックスと呼ぶ箱、そして18世紀の詩も含まれていた。
写すのではなく、翻訳する
題名の鍵となる語は翻訳だ。ラルワニは1750年の庭の匂いを再建するとは言わない。その匂いを正確に知る人は誰もいない。彼女は翻訳するのだと言う。花火の絵は煙になる。バラ園はバラになる。絵として描かれた旋法は、今度は香りになる。一歩ごとに選択がある。
これは訪れる人を奇妙な位置に置く。目の前にあるのは絵の複製だが、匂いは本物で、いま、この部屋にある。イメージは遠く、香りは近い。おそらくそれが要点なのだろう。匂いは美術館の許可を必要としない。ムガルの宮廷そのものが匂いの文化だった。バラ園から、客を迎えるためのローズウォーターの散水器まで。
「Bagh-e Hind」は、声を荒らげることなく所有についても語る。これらの絵は、交易や植民地支配など多くの経路でインドを離れた。プロジェクトは返還を求めない。ただ、庭は額縁の中にすべては収まらないことを思い出させる。残りの部分、土、花、煙は、いまもそれが育った場所と、そこに暮らしつづける人々のものだ。
2018年のバーチャル展覧会から2022年のロサンゼルスの一室まで、「Bagh-e Hind」は一つの問いを持ちつづける。イメージが遠くへ旅してしまったとき、鼻はまだ帰り道を見つけられるだろうか。