エッセイ · デザインとしてのファッション
Burberry. The Burberry Trench: Crafting an Icon.
天候に耐えるためにつくられたコート。
© Burberry · Victoria and Albert Museum (V&A)
サウス・ケンジントンの小さな部屋
「The Burberry Trench: Crafting an Icon」は、ロンドンの V&A サウス・ケンジントン、プリンス・コンソート・ギャラリーでのコンパクトな展示。入場無料、予約不要。会期は2027年1月3日まで。
美術館はこれを、バーバリーのトレンチの短い歴史として示す。実用的なアウターウェアと軍服から、世界じゅうで知られるファッションの象徴へ。その根は現代の英国デザインにある。
「短い」という言葉が大事。いくつもの部屋にわたる大きな展覧会ではない。ひとつのケース、ひと並びの物、手短に語られる物語。その簡潔さがコートに合っている。とうの昔に定まった、言葉をほとんど必要としない形。
トレンチとは、掘られた溝のこと。その名は今も第一次世界大戦の年月を抱えている。将校たちが西部戦線でこの種のコートを着ていたころ。この衣服は、それが立っていた場所の名を負っている。濡れた地面、泥、やまない雨。
布が先、形はあと
バーバリーは19世紀半ば、イングランド南部ベイジングストークのトーマス・バーバリーの店に始まる。その名をつくったのは形ではなく、布だった。ギャバジン。目が詰まって織られ、雨と風に強く、それでいて通気性がある。19世紀後半にトーマス・バーバリーが開発した。
コートは布のあとに来た。ギャバジンのコートは狩猟、釣り、長い散歩、さらに遠い旅に着られた。戦争が来ると、その布は軍服になった。トレンチの細部には、どれも実用上の理由がある。冷たい風に立てる襟、コートを体に寄せるベルト、肩のストラップ、二列のボタン。
V&A のコレクションは、数十年にわたるバーバリーの物を収め、コートがどれほど長く生きてきたかを示す。1908年から1910年ごろにロンドンでつくられたバーバリーの見本帳。1929年ごろのスキースーツ。1970年代初めと1988年のレインコート。クリストファー・ベイリーがデザインした2014年のトレンチ。
ひとつから次へと移ると、ひとつのことがはっきりする。形はほとんど変わらない。変わるのは布、色、肩の裁ち方、裾の長さ。
トレンチであって、トレンチでないもの
展示は古典的なコートだけを見せるのではない。コートが問い直された瞬間を並べて置く。
1937年から1944年ごろの婦人向けカタログ。そこでトレンチはすでに女性のワードローブでおなじみのもの。1979年のハーディ・エイミスのカーコート、名入れのラベルつき。ピンクのメタリックシルクの紳士用トレンチ、2013年春夏。ミラー刺繍の紳士用トレンチ、2015年秋冬。紫のバロック柄プリントの、フリンジつき婦人用トレンチ、2025年冬。そして紳士用のニットのダック・ハット、2023年冬。
ダック・ハットは場違いかもしれない。それでも、英国の天気について何かを語っている。鴨は雨を恐れない。
ピンクのメタリックや鏡のトレンチは、もう塹壕の泥には耐えられない。機能が移ったあとも、形を保っている。コートはもう誰かを雨から守らない。見慣れた形を、ほかの人に見分けさせる。
形が象徴になるとき
タイトルの「icon」という言葉は、広告のように聞こえるかもしれない。近くで見ると、これはあらゆる変奏を生き延びるほど明確な、ひとつの形の物語。
トレンチはシルクにも、ウールにも、プリントにも、鏡張りにもなりうる。それでも見る人はその名を言える。襟、ベルト、ボタン。数本の線で十分。
それは、デザイナーがよく探し求め、めったに見つけられないもの。ラベルなしで、身体が覚えている形。トレンチがそれを持つのは、ランウェイで着られる前に、本物の雨の中でたくさん着られてきたから。
V&A が何世紀にもわたる男性の服をどう見てきたかについては、Penta は「Fashioning Masculinities」について書いている。かつて将校のコートだったトレンチも、その物語に属している。