エッセイ · 嗅覚アート
クララ・ウルシッティ「Pheromone Link TM」
Clara Ursitti. Pheromone Link TM.
見る前に、誰かを選ぶ。
© Clara Ursitti · Clara Ursitti(作家公式サイト)
写真のない結婚相談所
「Pheromone Link TM」は、ひとつのアイデアから始まった。嗅覚でパートナーを選ぶ出会いの仲介所。クララ・ウルシッティは1990年代末から2000年代初めにかけて、数年をかけてそれを育てた。
方法は単純だった。ボランティアが、着たTシャツを一枚提供する。一枚ずつ保管され、番号を振られ、名前はない。シャツは合わせて、彼女が「Scent Library」と呼ぶものになった。
訪れた人はシャツを一枚ずつ嗅ぎ、いちばん好きなものを選ぶ。そしてシャツの持ち主に、デートで引き合わされる。
作品は各地で、異なる形でつくられた。1997年、スコットランド・エディンバラの Collective Gallery。1999年、アイスランド・レイキャビクのリヴィング・アート・ミュージアム。2001年、カナダ・トロントの YYZ Artist's Outlet と、フィンランド・トゥルクの Club Dynamo。
鼻で選ぶ
どの仲介サービスも、情報から始まる。写真、年齢、職業、趣味。人はプロフィールを読み、写真を見て、会うかどうかを決める。仕事の大半は目と理性がする。
ウルシッティはそのすべてを取り去る。「Scent Library」には写真も言葉もない。布と匂いだけ。訪れた人は、12番のシャツを着ていた人が背が高いのか低いのか、若いのか年配なのか、何をしているのかを知らない。わかるのは、その匂いをもう一度嗅ぎたくなるかどうかだけ。
それはとても古い選び方だ。文字より古い。現代の暮らしでは、たいてい石鹸、デオドラント、香水の下に隠されている。大切なことを鼻に決めさせることは、めったにない。「Pheromone Link」はその決定を鼻に返す。少なくとも、ギャラリーでの午後のあいだは。
Tシャツには科学の先例がある。1995年、スイスの動物学者クラウス・ヴェーデキントは、男性が寝るときに着たTシャツを女性が嗅ぎ、匂いを評価するというよく知られた実験を行った。ウルシッティは実験をしなかった。同じ仕草を、本物の出会いに変えた。
TM と惹かれ合うことの市場
題名には小さな二文字がある。TM、商標の記号。ウルシッティは作品を芸術作品としてではなく、製品として、サービスのブランドとして名づけた。「Pheromone Link」は、事務所とチラシと顧客を持つ会社のように響く。
商業的な外殻は、ひとつの批評だ。人と人が惹かれ合うことは、ずっと売り物にされてきた。誘惑を約束する香水に、広告に、出会いのサービスに。フェロモンという言葉そのものも、他人を夢中にさせると約束するスプレーを売るのによく使われる。
ウルシッティはまさにその言葉を取り、包装できないもので満たす。本物のシャツについた、本物の人の、本物の匂い。売られる処方はない。保証される約束もない。あるのはデートだけ。それがどこへ向かうかは、誰も知らない。
芸術が出会いへ導くとき
「Pheromone Link」が匂いを扱う多くの作品と異なるのは、ギャラリーで終わらないことだ。外へ続く。カフェへ、ある夕べへ、見知らぬ二人の会話へ。最も大切な部分は、作家のいない場所で起こる。
作品はまた、参加者にすべてを委ねている。シャツを提供するボランティアがいなければ、「Scent Library」は空っぽだ。選ぼうとする訪問者がいなければ、デートはない。作品は、見知らぬ人に自分を嗅がせてもいいと思う人々のネットワークだ。
ウルシッティの実践のなかで、「Pheromone Link」は「Eau Claire」とは違う方向へ進む。あちらでは、一人の匂いが瓶に詰められ、展示される。こちらでは、多くの人の匂いが、人と人をつなぐために使われる。肖像から、彼女は関係へと移る。