エッセイ · 嗅覚アート
デルシー・モレロス(Delcy Morelos)。「El espacio vientre」。
Delcy Morelos. El espacio vientre.
土もまた、守ることを知っている。
© MUAC, UNAM · MUAC Museo Universitario Arte Contemporáneo (UNAM)
土でできた美術館の一室
2025年10月18日から2026年半ばまで、メキシコ国立自治大学の現代アート美術館 MUAC の第9室は、まるごとデルシー・モレロスに委ねられた。キュレーターはアレハンドラ・ラバスティーダとダニエル・モンテロ。
作品の名は「El espacio vientre」、子宮の空間。主な素材は、トウモロコシが育てられている畑から採った土。準備のため、モレロスはメキシコシティ、オアハカ、チアパスを巡り、素材を集め、作品が対話することになる場所を調べた。
訪れた人は物の前に立つのではない。土に囲まれた空間の内側に立つ。そして最初に届くのは匂い。土、畑、トウモロコシという植物。
絵画から土の塊へ
モレロスは1967年、コロンビアのティエラ・アルタに生まれた。MUAC は彼女を、国際的に最も評価されているコロンビアの作家の一人と紹介している。
初期の作品は絵画だった。そこで彼女は、土の問い、肌の色の問い、コロンビアの暴力の問いを立てた。やがて絵画では足りなくなる。彼女は特定の場所のためにつくる立体的な介入へと移り、いくつもの感覚を同時に働かせるようになった。
すべてを貫く糸は土。絵画の時代、土は色であり主題だった。のちに土は素材そのものになった。重さ、湿り気、匂いをもって。訪れた人はもう画面越しに土を見ない。その内側にいて、それを嗅ぐ。
母としての土
題名が考えを告げている。土は女性的な存在として、豊穣と養いに結びつけて考えられる。部屋は子宮として、守られる場所として、そして内側へ向かう場所として考えられる。
匂いはその考えの中心にある。美術館によれば、部屋はトウモロコシの匂いを帯び、作品は見るための見世物よりも、訪れた人の内的な状態へと向かう。メキシコで、トウモロコシはただの作物ではない。先住民の文化の、食事の、儀礼の柱。
どんな土でもなく、トウモロコシ畑の土を選んだことに意味がある。それは働いてきた土。耕され、種をまかれ、水を与えられ、トウモロコシを育て、そして休ませられた。その匂いは原野の匂いではなく、人と大地の長い関係の匂い。
だからトウモロコシ畑の土の匂いは、ひとつの循環をまるごと運ぶ。土の中の種、伸びる植物、養われる人々、そしてすべてが土へ還ること。最も広い意味での子宮。
古い円との対話
MUAC はメキシコ国立自治大学のキャンパスにあり、作品が語りかける二つの構造物からそう遠くない。一つはクイクイルコのピラミッド、スペイン到来以前の円形の構造物。もう一つは UNAM のエスパシオ・エスクルトリコ、直径120メートルの円形の彫刻空間。
エスパシオ・エスクルトリコは空に開かれ、水平に広がる。モレロスはその関係を垂直の緊張に変え、空間を閉じて避難所にする。さらに、ペルーのカラルやコロンビアのシウダー・ペルディーダといった、より遠くのスペイン到来以前の円形構造にも触れている。
円、土、囲い。すべてがひとつの像へ向かう。見上げる記念碑ではなく、身を寄せる窪み。訪れた人が匂いを嗅ぐために入る部屋は新しくはない。ヴォルフガング・ライプの蜜蝋の部屋のように。けれど MUAC では、部屋はひとつの文化全体を養うものでできている。