エッセイ · 嗅覚アート
ショーン・ラスペット、Various Small Fires にて。
Sean Raspet at Various Small Fires.
森の匂い。人が書き換えた苔から。
Hyperallergic のための撮影 · Hyperallergic
列に並んだ庭
2021年、ショーン・ラスペットはロサンゼルスで初の個展を開いた。会場はハリウッドのノース・ハイランド・アベニューにある Various Small Fires。会期はその年の9月11日まで。
来場者は中庭から入った。そこでは、並べて置かれた三つの長方形のトレリスをアサガオの蔓がのぼっていた。批評家キャロライン・エレン・リュウ(Caroline Ellen Liou)は Hyperallergic で、それをミニマリズムの三連画になぞらえた。作品のいくつかには「Orange Noah Morning Glory」というタイトルがついている。
室内では、鉢植えの植物が等間隔の整った列で吊られていた。ある部屋には二酸化炭素のキャニスター。奥では、苔のパネルがときおりかすかなパチュリの匂いを放っていた。
すべては清潔に、ほとんど無菌のように配置されていた。こぼれた土も、落ち葉もない。自然は実験室の標本として現れた。それこそが狙いだった。
三つのプロジェクト、ひとつの素材
Various Small Fires によれば、この展示は関連する三つのプロジェクトを集めたもので、共通の素材は炭素だった。増やされ、循環させられ、回収された炭素。
一つ目は、放射線と化学変異原にさらし、ランダムな遺伝子変異を起こさせた植物の一群。プレスリリースはこれを、変わりゆく気候に植物が適応する助けとなる変化を探す、アーティストによる実験と説明した。
二つ目は、直接空気回収によって大気から取り除かれた1メートルトンの CO2。ギャラリーではただのキャニスターだった。だがそれは、ろ過された膨大な量の空気を表していた。
三つ目が苔だ。パチュリやほかの花をつける植物の遺伝子を組み込んだ苔による、生物的な空気ろ過システム。苔はパチュロールとリナロールという分子をつくり続け、林床を思わせる、土っぽく少し花のような匂いを生む。
どのプロジェクトも、異なる規模と速度で空気から炭素を引き出す。植物はゆっくりと。機械は速く。苔は、ろ過と香りづけを同時に。
自然を展示するとはどういうことか
それは Hyperallergic の批評のタイトルであり、展示が後に残す問いでもある。私たちは文明と自然を反対側のものと考えがちだ。ラスペットはそのふたつをひとつの部屋に置き、どちらがどちら側なのかを見分けさせない。
ラスペットは長く香りの分子を扱ってきた。「Residuals」のような以前のプロジェクトでは、ギャラリーそのものの空気を7日間採取し、その背景の匂いを壁に濃縮した。空っぽだと思っている空気には匂いがあり、とらえることができた。Various Small Fires で彼は再び空気に戻る。今度は生きたものを通して。苔はもはや苔だけではない。特定の匂いを放つようプログラムされた、生化学的な装置だ。
それは来場者を不安にさせるかもしれないし、興味を引くかもしれない。その両方かもしれない。パチュリの匂いは心地よい。その出自を知ると、問わずにいられない。人が書いた森の匂いは、それでも森の匂いなのか。
批評家は、この展示が切迫した政治的な問いを、私たちが吸う空気そのものに埋め込んでいると述べる。炭素、気候、遺伝子。大きな主題が、ここでは部屋の奥のかすかな匂いとして現れる。展示が記憶に残るのは、声を荒げないからだ。空気に語らせる。