エッセイ · 嗅覚アート

エルザ・スキャパレリ「Succès Fou」。

Elsa Schiaparelli. Succès Fou.

落ちることのない一枚の葉。

エルザ・スキャパレリ、香水「Succès Fou」のボトル:ピンクの布を張った厚紙の箱に収まる、葉の形をした緑のガラスボトル

© Victoria and Albert Museum, London; Susan Marks より Diana June Simons(née Davies)を偲んで寄贈 · Victoria and Albert Museum (V&A)



ピンクの箱のなかの一枚の葉

「Succès Fou」はスキャパレリのメゾンの香水。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館にあるボトルは、同館により1952年から1954年頃のものとされる。フランス製、おそらくパリ。

葉の形をした緑のガラスに、エナメルと金箔の装飾。縦横それぞれ約9 cm、奥行きはわずか2 cm。そろいの厚紙の箱が付き、内側にはピンクの布が張られている。同館はボトルと箱を、四つの部分からなる一組として所蔵する。

この一組は2025年、Susan Marks によって Diana June Simons(née Davies)を偲んで V&A に寄贈された。2026年には V&A South Kensington の展覧会「Schiaparelli: Fashion Becomes Art」で公開された。

succès fou はフランス語で、大成功、狂気と紙一重の成功を意味する。その名をガラスの葉にのせるのは、軽い冗談だ。いちばん壊れやすい物が、いちばん声高な名を運ぶ。

正規の訓練を受けなかったクチュリエ

エルザ・スキャパレリは1890年に生まれ、1973年に亡くなった。V&A によれば、彼女は正規の訓練を受けないまま、1927年にクチュールメゾンを開いた。五年のうちに、サロンは400人を雇い、年に7,000着を超える服をつくるようになった。

新しいもの、実験的なものを歓迎し、サルバドール・ダリやジャン・コクトーといったアヴァンギャルドの芸術家と協働した。彼女の服にはシュルレアリスムの精神があった。奇妙な像、間違った場所にある物、見る人に二度見させる細部。

スキャパレリは、メゾンを開いた翌年の1928年から香水をつくった。彼女にとって香りは副業ではなかった。同じ像の世界に属していた。ショッキングピンクと呼ばれる鮮烈な色は彼女の名と結びつき、1937年の香水のひとつは Shocking と名づけられた。

包みは香りの一部

「Succès Fou」では、ボトルと箱は香りから離れて立ってはいない。買い手が最初に触れる層だ。厚紙、ピンクの布、緑のガラス、金のかすかな痕跡。どの素材も、栓を開ける前の小さな場面を演出するために選ばれている。

これはファッションデザイナーの考え方だ。ドレスは布だけではない。着る人が部屋に入るその入り方だ。スキャパレリのボトルも同じように働く。香りが手のなかに入ってくる、その入り方。

葉はまた、ごく静かな音域でのシュルレアリスムの像でもある。落ちず、乾かず、色も変えない葉。本物の葉が樹液を抱くように、内に液体を抱く。見慣れたものは、別の素材でつくられると奇妙になる。

だからピンクの裏地は偶然ではない。それはメゾンの色で、緑の葉のすぐ下に敷かれている。対照する二つの色。ひとつは植物の色、ひとつは都市と舞台の色。箱を開ける人は、両方を同時に見る。

「Succès Fou」はメゾンの最後の年月に属する。V&A によれば、スキャパレリは1954年に正式に引退した。大成功の名をもつボトルが、その名づけ親の道が閉じようとする頃につくられた。

それでもボトルは悲しみを語らない。軽く、遊び心があり、緑のまま。スキャパレリの精神が、有名なドレスだけでなく、買い手の化粧台の上の小さな物にも生きていたことを示している。

その世界の全体を見るなら、パリの展覧会「Shocking! Les mondes surréalistes d'Elsa Schiaparelli」についてのエッセイを。この緑の葉は、そのごく小さな片隅。片手に収まるだけの大きさ。