エッセイ · 嗅覚アート

フランシス・クルジャン「Parfum, sculpture de l'invisible」

Francis Kurkdjian. Parfum, sculpture de l'invisible.

匂いにかたちはない。それでも空間を占める。

フランシス・クルジャン「Parfum, sculpture de l'invisible」。パリ、パレ・ド・トーキョーでの香りのインスタレーション

Palais de Tokyo · Palais de Tokyo



美術館のなかの香水メゾン

2025年10月29日から11月23日まで、パリのパレ・ド・トーキョーで「Parfum, sculpture de l'invisible」という展覧会がひらかれた。香水、見えないものの彫刻。建物の中間階、「Saut du Loup」と呼ばれる空間に置かれた。

冠された名はフランシス・クルジャン。フランスの調香師であり、2009年にマルク・シャヤ(Marc Chaya)とともに創設したメゾン・フランシス・クルジャンのクリエイティブ・ディレクター。展覧会はメゾン自身が主催し、彼の仕事の30年を記念するものだった。来場者はブランドの公式サイトから予約しなければならなかった。

その細部は重要。パレ・ド・トーキョーは、パリの主要な現代アートセンターのひとつ。けれど今回、語り手は独立したキュレーターではなかった。美術館の言葉で自らの物語を語る、ひとつのブランドだった。

それで展覧会の見る価値が減るわけではない。ただ、見方が変わるだけ。来場者は、半ば展覧会、半ば匂いをつくる男の回想録である部屋を通り抜けた。

対話する人々

展覧会は、一連の対話として組み立てられていた。クルジャンは多くの分野の人々と仕事をした。作家ソフィ・カル(Sophie Calle)、作家ヤン・トマ(Yann Toma)、演出家シリル・テスト(Cyril Teste)、写真家クリステル・ブーレ(Christelle Boulé)、指揮者でチェリストのクラウス・マケラ(Klaus Mäkelä)。フランスの報道はさらに、デザイナーのフェリペ・リボン(Felipe Ribon)とシェフのアンヌ=ソフィー・ピック(Anne-Sophie Pic)にも触れている。

かつて「The Hotel」でホテル客の持ち物を芸術に変えたソフィ・カルが、そのリストの筆頭にいる。展覧会についての報道によれば、二人は1999年に出会った。カルがクルジャンに、お金の匂いを香水にしてほしいと頼んだときのこと。彼はその出会いを転機と呼んでいる。作家が彼に、心地よい匂いではなく、ひとつの考えを求めた初めてのことだった。

ヤン・トマとは、飲める香水「L'Or bleu」をつくった。展覧会では、小さな噴水からそれが流れていた。別の廊下には、セーヴル磁器製作所(Manufacture de Sèvres)の職人が焼いた磁器の薔薇が立ち、磁器の花びらそのものが香りを放っていた。

どの物も、匂いを瓶の外へ取り出すひとつの方法。飲むための水のなかへ、眺めるための磁器のなかへ、音楽のなかへ、写真のなかへ。展覧会はそれらを、遺産作品、嗅覚インスタレーション、香りの物と呼んだ。

ひとつの瓶をめぐる部屋

もっとも新しい作品は「L'Alchimie des sens」、感覚の錬金術。メゾンでもっともよく知られた香り、バカラ ルージュ 540(Baccarat Rouge 540)を中心に組み立てられた没入型のインスタレーション。

ここで、彫刻という考えはもっとも遠くまで進む。ふだんは瓶のなかに住み、店で売られ、手首に吹きつけられる匂いが、部屋全体へと広げられる。来場者は匂いを手に取るのではない。そのなかへ歩いて入る。

ここでもまた、展覧会はもっとも引き裂かれている。売れ筋の製品を中心に組み立てられた部屋は、作品であると同時にプレゼンテーションでもある。来場者はその両方を感じ取ってかまわない。選ぶ必要はない。

匂いは彫刻か

タイトルの問いは、展覧会よりもずっと古い。20世紀の初めから、作家たちは匂いをギャラリーに持ち込もうとしてきた。けれど調香師が作者として美術館に招かれることは、ほとんどなかった。彼らはたいてい瓶の後ろ、ブランドの後ろ、広告の顔の後ろに立っている。

クルジャンは別の立場を主張する。彼は香水を、呼吸される素材だと言う。石やブロンズが、見られ触れられる素材であるように。彫刻には量感、重さ、影がある。匂いには広がり、持続、それが占める空気の領域がある。

その考えを受け入れれば、調香師は空気を素材にするある種の彫刻家になる。香りのある部屋はどれも、誰にも輪郭を描けないひとつのかたちになる。

展覧会は問いに決着をつけない。来場者に、磁器の花から噴水へ、ひとつの部屋から次の部屋へと、空気のかたちのあいだを歩かせる。そして自分で決めさせる。彫刻の前に立ったのか、それともただ匂いをとらえただけなのか。