エッセイ · 写真
ガウリ・ギル(Gauri Gill)「Acts of Appearance」
Gauri Gill. Acts of Appearance.
仮面は隠さない。仮面は見せる。
documenta 14 · documenta 14
ジャウハールの仮面
ジャウハールはインド西部、マハーラーシュトラ州の地区。アーディヴァーシーの共同体であるコクナが古くから暮らし、この地域は張り子の品で知られる。最もよく知られるのは仮面。神々、悪魔、古い物語の登場人物で、ボハダ祭で身につけられる。
仮面づくりは家族の中で受け継がれる。スバスとバグワン・ダルマ・カドゥの兄弟もそうした家族のひとつに属する。2015年、ガウリ・ギルはひとつの提案をもって彼らのもとを訪れた。
ギルは1970年にチャンディーガルで生まれた。かつてフォトジャーナリストとして働き、その後何年もかけてラージャスターンの砂漠で農村や移住の共同体を撮り、シリーズ「Notes from the Desert」とした。「Acts of Appearance」の前には、ワルリーの作家ラジェシュ・ヴァンガドと「Fields of Sight」に取り組み、彼女の写真と彼の素描が一枚の紙を分かち合った。人を撮るのではなく、人と共に制作すること。それは彼女がくり返し選んできた道。
神も悪魔もなく
ギルの提案は簡潔だった。伝統的な神々や悪魔のかわりに、今日の暮らしにあるものの仮面をつくること。彼女は、祭りの登場人物と、いまのジャウハールの人々の実際の暮らしとの距離について考えていた。村人たちが自分の手でその距離を縮めたら、それがどんな姿になるのかを見たかった。
カドゥ兄弟は引き受けた。彼らの家族と、ボランティアの一団、合わせて三十人以上が作業に取りかかった。知っている人々、動物、物の仮面をつくった。聖なるものではなく、手の届くところにあるもの。
写真はそのあとだった。ギルと協働者たちは、仮面をつけた人々がいつもの日課をこなす場面を組み立てた。歩く、座る、働く、家の外に立つ。多くの場面はその場の即興だった。書かれた役を演じた者はいない。いつもしていることを、別の顔でした。
色、演出、実在の人々
「Acts of Appearance」はカラーだ。この細部は大切だ。ギルの以前の作品の多くは、モノクロのシルバープリントだったから。仮面の絵具、衣服、土、壁が、ぼかしも劇的さもなく、澄んだフレームの中に並んでいる。
これらの写真で奇妙なのは仮面ではない。仮面はその土地のもの。奇妙なのは、祭りのない午後に仮面が現れること。見る者は、これが記録なのか舞台なのか確信できない。おそらく両方だ。
題がそれを語っている。Appearance は姿を現すことであり、物の見かけでもある。act of appearance とは、自分で選んだしかたで、見られるために踏み出すこと。数十年前、リジア・クラークも仮面をつくったが、それは着ける人が世界をどう見て、どう嗅ぐかを変えるためだった。ジャウハールでは仮面は外を向いている。他者がどう見るかを変える。
ジャウハールからカッセルへ
2017年のドクメンタ14では、「Acts of Appearance」のアーカイバル・ピグメント・プリント25点が、カッセルのヘッセン州立博物館に二つのサイズで展示された。67 × 101.6 cm と 40.6 × 61 cm。同じドクメンタのアテネ会場では、ギルは碑文博物館で別のモノクロのシリーズを見せた。
シリーズはそこで終わらなかった。ギルはジャウハールの共同体との制作を続けており、プロジェクトは進行中とされている。仮面はいまもつくられ、場面はいまも組み立てられている。
心に残るのは、この作品が像をつくる力を写真の中の人々に返していること。仮面職人が顔を決める。着ける人がポーズを決める。写真家は集団の一員。写真は共同体を外から眺めない。その共同体が共につくったもの。