エッセイ · 嗅覚アート

AIX Scent Fair。

AIX Scent Fair.

香りが売られるだけでなく、問われたフェア。

ロサンゼルス、ハマー美術館での AIX Scent Fair。独立系調香師たちのフェア

ハマー美術館 · Hammer Museum



ハマーでの三日間

2016年5月6日から8日まで、ロサンゼルスのハマー美術館で AIX Scent Fair が開かれた。共催は Institute for Art and Olfaction と、Luckyscent および Scent Bar。ハマーのすべての公開プログラムと同じく、入場は無料だった。

フェア本体は土曜と日曜、午前11時から午後5時まで。アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、マレーシア、インドネシア、スペイン、イタリアなど、多くの国から50人を超える調香師が参加した。そのなかにはイタリアの Bogue Profumo と Mendittorosa、Brooklyn Perfume Company、DSH Perfumes、Imaginary Authors がいた。

多くは独立系の調香師で、少量をつくり、背後に化粧品グループを持たない。大きな百貨店で見かけることはまれだ。フェアは彼らに、めったにない立ち位置を与えた。化粧品売り場ではなく、美術館である。

Institute for Art and Olfaction、通称 IAO は、アートにおける匂いに取り組むロサンゼルスの組織だ。Luckyscent と Scent Bar は、この街で独立系香水を販売し紹介している。両者はハマーで出会った。香りをアートとして考える側と、日々棚の上で香りとともに暮らす側。

語る、嗅ぐ、つくる

フェアは5月6日金曜の夜、オデット・トワレット(Odette Toilette)の名で知られるリジー・オストロム(Lizzie Ostrom)の基調講演で幕を開けた。続いて、チャンドラー・バー(Chandler Burr)、エイヴリー・ギルバート博士(Dr Avery Gilbert)、ジャクリーン・フォード・モリー(Jacquelyn Ford Morie)によるパネルがあり、司会はサスキア・ウィルソン=ブラウン(Saskia Wilson-Brown)が務めた。

彼らは匂いの世界のそれぞれ違う片隅から来ていた。香水についての執筆とキュレーション、嗅覚の科学、テクノロジーとバーチャルリアリティ。彼らをひとつのテーブルに並べたことに、フェアの志が表れていた。匂いについて、いくつもの側から同時に語ること。

土曜と日曜の午後1時には、実験的な調香のワークショップがあった。各回16人まで、事前登録制。日曜の朝には Scent Lab が開かれた。ペルセフェニー・リー(Persephenie Lea)による予約不要のセッションで、家族連れも参加できた。

つまり来場者には、香りと出会う三つの道があった。他の人が香りについて語るのを聞く。テーブルのあいだを歩いて嗅ぐ。座って、自分のものを調合する。三つは遠くから近くへと移っていった。

匂いのための授賞式

5月7日土曜の夜、フェアは IAO の第3回 Art and Olfaction Awards を開催した。司会はアーティストのザッカリー・ドラッカー(Zackary Drucker)。賞の名は Golden Pear という。

カクテル、DJ、ロサンゼルスのアートの夜の空気。けれど大事なのは、それがそもそも存在したことだ。商業香水には業界の賞がたくさんある。アートとしての香りに贈られる賞、それも大学の美術館の中で贈られる賞は、はるかにまれである。

IAO はその後も、アートにおける匂いをめぐる別のプロジェクトへ進んだ。たとえば展覧会「Storycraft: Twelve Olfactory Narratives」。AIX はその道の目印だった。この組織が、調香師のコミュニティをまるごと大きなアートの空間へ連れてきた瞬間である。

なぜフェアを覚えておく価値があるのか

表面だけ見れば、AIX は見本市に似ていた。ブース、ブランド、ショップ。けれど、無料で、ワークショップと議論をともなってハマーで開かれたことが、それを別のものにした。

美術館では、私たちは絵の前に立ち、それが何を意味するのかと問うことに慣れている。AIX では、来場者は匂いについて同じことをするよう招かれた。心地よいかどうかだけでなく、どうつくられたのか、どんな場所を思い出させるのか、つくり手は何を考えていたのか。

小さな変化であり、大切な変化である。匂いはふつう、私生活と市場の棚に分類される。ハマーでのフェアはそれを公共の空間に置いた。ほかのどんな芸術形式とも同じように語られうる場所に。