エッセイ · 嗅覚アート

ルーシー・チネン、ショーン・ラスペット「Chloroform Scopolamine」

Lucy Chinen, Sean Raspet. Chloroform Scopolamine.

自分を制御できなくなる瞬間についての香り。

ルーシー・チネンとショーン・ラスペット「Chloroform Scopolamine」:ギャラリーの中の、エンジェルズトランペットに着想を得た香水


一輪の花と、映画の一場面

「Chloroform Scopolamine」は、ルーシー・チネンとショーン・ラスペットがロサンゼルスの IAO Gallery で2025年3月22日から4月20日まで開いた展覧会。その中心にあるのは、作品としてつくられた一つの香水である。

二つの源は、違う世界から来ている。一つはエンジェルズトランペット、ブルグマンシア。大きな花を垂らす植物で、スコポラミンの自然の源。もう一つは映画でおなじみの型。犯人がクロロホルムを染ませた布を被害者の顔に押しつけ、被害者は数秒で崩れ落ちる。

映画を十分に観る人なら、この場面を知っている。すばやく、手際よく、脚本に都合がいい。それは匂いについての像でもある。一息、そして意識を失う。チネンとラスペットは二つの源を並べて置く。一つは土から育ち、一つはスクリーンから育った。

翌日の匂い

作家たちは自分たちの香水を、ほのかに邪悪で、陰影に富むと言う。始まりは、架空の集まりを思わせるみずみずしいノート。次に幻の煙草。それから彼らが呼ぶところの、化学薬品をこぼした神経質な犯人のベースへ落ち着く。鋭いグリーンの合成のノートとともに。

彼らはまた、それを一つの正確な感覚にたとえる。だまされて自分からATMでお金を引き出した、その翌日。意識を失う匂いではなく、我に返り、何が起きたかを理解する匂い。

幻の煙草は、スコポラミン使用後に記録された作用に由来する。人は、架空の煙草を吸っている自分をありありと見る。展覧会が引いたある証言は、使用者たちが床を這い、落とした煙草を探し、それが初めからなかったことに気づくまでを語る。香水はまさにその痕跡を保つ。存在しないものの煙。

繰り返される動作

オープニングの夜、パフォーマーのリーゼル・ハンソンとリー・タイラー・トンプソンが、振り付けられた一連の動きを行った。その動きは二つのものを混ぜていた。映画の犯人がクロロホルムの布を当てる仕方と、スコポラミンの影響下にある人のトランス。二人は部屋じゅうに、輪を描くように香水をまいた。

作家たちは、フランスの作家レーモン・ルーセルの小説「Locus Solus」を挙げる。そこでは死体がふたたび動かされ、生前のいちばん大事な身ぶりを繰り返す。ギャラリーのパフォーマーたちもまた、自分の外の何かに動かされるように繰り返す。

その像が、作品の問いを研ぎ澄ます。ある物質が息を通して身体に入るとき、動いているのは誰か。パフォーマーか、それとも匂いか。

二人の作家、主題としての一つの分子

ルーシー・チネンは作家であり書き手で、藻類をもとにした食品会社 nonfood の共同創業者。2023年にロサンゼルスの Sean's Room で展示し、Serpentine Galleries の Synthetic Ecologies Lab に参加した。

ショーン・ラスペットは十年以上にわたって香りと分子構造を扱い、第9回ベルリン・ビエンナーレやデ・ヤング美術館など、広く展示してきた。別の作品「New Olfactory Molecules」では、かつて存在しなかった香りの分子を設計した。ここでは逆のことをする。自然のなかにすでにあり、すでに神話に包まれた分子をとり、その神話がどんな匂いかを問う。

展覧会は化学物質について何も教えず、何も勧めない。匂いと恐れが出会う場所に立ち、来場者に自問させる。なぜ心地よい匂いが私たちを疑わせるのか。