エッセイ · 現代アート
ナンシー・ホルト(Nancy Holt)。「Sun Tunnels」。
Nancy Holt. Sun Tunnels.
小さな穴を通る光は、時計になる。
撮影:Nancy Holt;© Holt/Smithson Foundation and Dia Art Foundation/Artists Rights Society, New York によるライセンス · Holt/Smithson Foundation
砂漠の四本のコンクリート管
ユタ州北西部、グレートベースン砂漠。ゴーストタウンのルーシンから南東へ数マイルの平らな地面に、四本のコンクリート管が横たわる。一本は長さ約18フィート、直径9フィート。大人が中でまっすぐ立てる高さがある。
管は開いた X の形に置かれている。配置全体のいちばん長い対角線は約86フィート。まわりには白っぽい土、低い灌木、そしてほとんど何にも遮られない地平線。
これはナンシー・ホルトの「Sun Tunnels」。1973年から1976年にかけてつくられた。1974年、彼女は作品を置くためだけに、ここに40エーカーの土地を買った。どの都市からも遠い。見たい人は自分で探して訪ねるしかなく、たいていは光が変わるのを待つだけの時間、そこにとどまる。
素材は単純だ。コンクリート、鋼、土。作品をつくっているものは、このリストにない。太陽である。
夏至と冬至
二本の管は、夏至の日の出と日の入りに合わせてある。残る二本は、冬至の日の出と日の入りに合わせてある。その朝と夕、管の端に立つ人は、太陽がコンクリートの円の中に収まるのを見る。レンズの中のように。
一年のそれ以外の日、太陽はその軸から外れていき、また戻ってくる。作品は変わらない。変わるのは光の位置だけ。一年そこにいれば、太陽をめぐる地球の動きが四本の管によって刻まれるのを見るだろう。
ホルトは、この着想がはっきりしたのは砂漠にいたときだったと回想している。毎日、日の出と日の入りを眺め、地球の時間を守るように過ごしていた。作品は、その眺めることをとどめておく彼女なりの方法である。
壁の中の星座
どの管にも、コンクリートの壁を貫く丸い穴があけられている。でたらめではない。Holt/Smithson Foundation によれば、穴は四つの星座に対応する。りゅう座、ペルセウス座、はと座、やぎ座。一本に一つずつ。
昼間、日光が穴を通り、管の内側に丸い光の点を落とす。太陽が動くにつれ、光の点は曲面のコンクリートの上をゆっくり滑っていく。中に座る人は、昼の光でできた星空を見る。そしてそれが動くのを見る。
管の中には日陰がある。開けたその土地ではめずらしいものだ。作品は天文の器具であり、同時に、何もない砂漠の中の避難所でもある。
丸い枠越しの空
ナンシー・ホルトは1970年代のランド・アートの世代に属する。ギャラリーを出て、土や岩や開けた空間とじかに向き合った作家たちだ。夫のロバート・スミッソンは、同じユタのグレートソルト湖にSpiral Jettyをつくった。けれどホルトは自分の道を行った。彼女は大地を形づくらなかった。見る方法を形づくった。
砂漠は広すぎて、目がとらえるものがない。コンクリート管はその広さを丸い枠に切り取る。空の一部、地平線のひとかけらが見えるだけの大きさに。限られることで、まなざしは正確になる。広すぎる空を、私たちはざっと眺めるだけだ。丸い枠の中のひとかけらの空は、私たちを立ち止まらせる。どの雲が流れているか、光がどちらに傾いているか、自分の影が伸びているのか縮んでいるのか、気づきはじめる。
現在、Sun Tunnels は Dia Art Foundation が所有し、Holt/Smithson Foundation とともに管理している。いまもそこに立っている。見張りもなく、チケットもない。決まった日には、いまも太陽が管のちょうど中に昇る。