エッセイ · 嗅覚アート

「Perfume: A Sensory Journey Through Contemporary Scent」展

Perfume: A Sensory Journey Through Contemporary Scent.

どの香りにも、部屋が要る。

サマセット・ハウスの「Perfume」。現代の香水の着想をもとに演出された部屋

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イースト・ウィングの十の香り

2017年6月21日から9月23日まで、ロンドンのサマセット・ハウスはイースト・ウィング・ギャラリーで「Perfume: A Sensory Journey Through Contemporary Scent」を開いた。キュレーターはサマセット・ハウスのシニア・キュレーター、クレア・キャテラルと、Odette Toilette の名で知られるリジー・オストロム。

展覧会は十人の現代の調香師による十の香りを選んだ。ダニエラ・アンドリエ「Purple Rain」2015年。マーク・バクストン「Comme des Garçons 2」1999年。ベルトラン・ドゥシュフール「Incense: Avignon」2002年。オリヴィア・ジャコベッティ「En Passant」2000年。リン・ハリス「Charcoal」2016年。

さらに五つ。アントワーヌ・リー「Sécrétions Magnifiques」2007年。デヴィッド・S・モルツ「El Cosmico」2015年。ゲザ・ショーン「Molecule 01」2007年。アンディ・タウアー「L'Air du Désert Marocain」2005年。キリアン・ウェルズ「Dark Ride」2015年。

サマセット・ハウスによれば、これらに共通するのは、ありきたりの道を拒むことだ。煙や汗も含め、型破りな匂いを追う。名前を見るだけでわかる。炭、お香、分泌物。

香りごとの部屋

人々の記憶に残るのは展示のしかただ。香りごとに、その着想をもとにした部屋が建てられた。サマセット・ハウスはいくつかを挙げている。モロッコの砂漠、カトリックの告解室、ウォーターパーク、恋人の閨房。

砂漠はわかりやすい。アンディ・タウアーの香りの名にある。残りは来場者が結びつける。告解室は何の匂いがするか。古い木、蝋燭の蝋、お香の煙だろうか。ウォーターパークは。塩素、プラスチック、日焼け止めだろうか。展覧会はすべてに答える必要はない。匂いをひとつの場面に置き、あとは鼻にまかせる。

白い部屋で香りを見せるのとは、まったく異なる選択だ。ここで匂いは世界から切り離されていない。呼び起こそうとする場所へ戻されている。来場者は場所に入るように香りに入る。歩き回り、見て、それから嗅ぐ。

十の瓶に一世紀

十の部屋の前に、来場者は導入のインスタレーションを通った。二十世紀の先駆的な十の香り。十年にひとつずつ。

はじまりは1905年のコティ「L'Origan」。この展覧会のために特別に再現された。終わりは1994年の「ck one」。サマセット・ハウスはこれを、西洋の香水文化における最初のジェンダーニュートラルな香り、クリーンの流れを始めた一本と説明する。

ひとつの廊下に九十年。端から端へ歩くと、移りゆく好みの歴史を嗅ぐことができた。世紀のはじめの温かく濃密なフローラルから、誰のためでもある軽く澄んだものへ。

稼働する香水の実験室もあり、その仕事の科学、技術、原料、道具を紹介していた。来場者は完成した香りと、その背後にある手とガラス器具を見た。

作品としての香水

その五年前、ニューヨークでは The Art of Scent が、ほとんど空っぽの部屋を通して香水を美術館に持ちこんでいた。サマセット・ハウスは逆の道を行った。あらゆる背景を剥ぎ取るのではなく、背景を丸ごと建てあげた。

両方に現れた名がひとつある。ダニエラ・アンドリエ。ニューヨークでは2010年の「Untitled」。ロンドンでは2015年の「Purple Rain」。同じ調香師、ふたつの見せ方、ひとつの問いへのふたつの答え。香水をギャラリーにどう置くか。

サマセット・ハウスが明らかにしたのは、調香師にも画家と同じく、名前と様式と自らの選択があるということだ。心地よいものをつくるだけではない。煙を、汗を、告解室の空気を選ぶ者もいる。その難しい選択こそが、彼らを作者として見えるものにする。