エッセイ · 嗅覚アート
プレシャス・オコヨモン「the sun eats her children」
Precious Okoyomon. the sun eats her children.
香るものと毒あるものが、ひとつの苗床に育つ。
Precious Okoyomon: the sun eats her children 展示風景、Sant'Andrea de Scaphis、ローマ。提供:Sant'Andrea de Scaphis · The Art Newspaper
見捨てられた礼拝堂
サンタンドレア・デ・スカフィス(Sant'Andrea de Scaphis)は、九世紀にさかのぼるローマの小さな礼拝堂で、ずっと前に聖別を解かれている。長く見捨てられていたが、2015年に画商ギャヴィン・ブラウンが引き継ぎ、展示空間に変えた。ジョーン・ジョナス、アーサー・ジャファ、ヤニス・クネリスがそこで展示している。
2023年の夏、プレシャス・オコヨモンはその石の部屋を庭で満たした。作品名は「the sun eats her children」、すべて小文字で、2023年9月16日まで続いた。花咲く植物でいっぱいの閉ざされた部屋は、匂いの逃げ場がない部屋である。
The Art Newspaper によれば、庭にはジャスミン、背の高いユリ、スイカズラ、白いハナミズキ、赤いバラがあった。クズとサトウキビもあった。彼女が2022年のヴェネツィア・ビエンナーレのインスタレーションで使った二つの植物である。来場者はLEDの光の下、砂利道を歩いた。空色の翅をもつ黒い蝶のあいだを。
音もまた庭の一部だった。ケルシー・ルーによる交響的な音楽と、オコヨモン自身の声に、振付家オクウィ・オクポクワシリと研究者サイディヤ・ハートマンの声を混ぜた、録音された叫び。
熊と毒のある植物
庭の真ん中には、アニマトロニクスのぬいぐるみの熊が横たわっていた。高さ約一メートル、重さ85ポンド。白いレースの下着をつけ、白い包帯をリボン結びにし、気を失ったように横向きに寝ていた。その名は、トニ・モリスンが1987年に書いた、奴隷制とそれが身体に残すものをめぐる小説「Beloved」の登場人物からとられた。
オコヨモンは The Art Newspaper に、毒のある植物をたくさん置きたかったと語った。悪意からではない。彼女が考えていたのは蝶のことだ。蝶は次の世代を育てるために、まさにその植物の上で生きる。ここで毒は生命の敵ではない。循環の一部である。
熊、毒、叫び、そして花の匂いが合わさって、名づけにくい光景をつくる。豊かで繁茂しているが、安らいではいない。作品は黒い身体、権力、移住、腐敗、家族、植民地の傷に触れる。スローガンではなく、植物の言葉で。
植える詩人
オコヨモンはナイジェリア人の両親のもとロンドンに生まれ、ラゴスで暮らし、その後アメリカ中西部に移った。シカゴでは料理人として働きながら、パタフィジックと児童心理学を学んだ。ニューヨークではコミュニティ・ガーデンでボランティアをした。自らを何よりもまず詩人と呼ぶ。ハンス・ウルリッヒ・オブリストは2017年、サーペンタイン・ギャラリーで、彼女の詩を通して彼女を見出した。
2023年、彼女は29歳だった。MMK フランクフルト、パフォーマンス・スペース・ニューヨーク、アスペン美術館で展示し、2022年ヴェネツィア・ビエンナーレの企画展にも参加していた。ギャラリーの所属作家になったことはない。計画もなく、いつも土と植物で遊んできたという。言葉が導いてくれると信じて。
「the sun eats her children」が心に残るのは、庭を展示するのではなく、庭を植えるからだ。かつて祈りのための部屋に植え、花の匂いに、かつて祈りがしていたことをさせる。空間を満たし、そこに立つ人々に届く。許しを求めることなく。ヒシャム・ベラダの夜の庭のように、植物は屋内に持ち込まれ、来場者の鼻と出会う。展示が終わると、庭はそれを吸い込んだ人々のなかに、記憶としてだけ残った。