エッセイ · 嗅覚アート
ラファエル・サーデラー1世(マールテン・デ・フォス原画)「Smell」
Raphael Sadeler I theo Maarten de Vos. Smell.
目に届く前に、二つの手を通った像。
The Art Institute of Chicago、Charles Hack and the Hearn Family Trust Collection。Harry B. and Bessie K. Braude Memorial、Amanda S. Johnson and Marion J. Livingston、匿名、Suzanne Searle Dixon の寄付基金により購入 · The Art Institute of Chicago
木の下の女性
版画はとても小さい。約10×13cm、手のひらほどの大きさ。
同じく一枚を所蔵するアムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)によれば、嗅覚を擬人化した女性は木の下の地面に座り、花瓶に花を生けている。足もとでは二匹の犬が遊ぶ。遠くには町が広がる。
静かな場面である。鼻に掲げられる花も、陶酔もない。女性は手で、ありふれた仕事をしている。それでも、彼女のまわりのすべてに匂いがある。花、葉、土、そして二匹の犬。鼻で生きる動物だ。
ヨーロッパの寓意において、犬は嗅覚のなじみの連れである。ここで犬たちは匂いを追っていない。遊んでいる。まるでこの庭では、嗅覚が綱を解かれたかのように。
像の下にはラテン語の詩が添えられている。Gratus odor、心地よい匂い、で始まり、acerbus、鋭い、あるいは苦い、で終わる。その両端だけでも何かを示している。匂いは甘いものだけではない。
Invent、fec。銅版の上の二つの名前
左下の版には Martin. de Vos invent. とある。マールテン・ド・フォスが像を考案した、という意味だ。中央には R. sadler fec.。R. サデラーが版を彫った、という意味。これは当時の版画の標準的なクレジットだった。一行は考案者に、一行は彫版師に。
マールテン・ド・フォスは1532年に生まれ、1603年に没した。16世紀後半のアントワープを代表する画家で、祭壇画や肖像画を描き、彫版師のために数多くの図案を手がけた。
ラファエル・サデラー1世は1560年か1561年ごろ、フランドルの彫版師の一族に生まれた。1581年、この「五感」の連作を彫ったとき、彼はおよそ二十歳だった。
アムステルダム国立美術館は三人目の名を挙げる。一世代前のアントワープの画家フランス・フローリス。図案の着想源とされる人物だ。こうして小さな一枚の紙が三つの層を抱える。先人の着想、考案者の像、彫版師のビュラン。
五枚一組、何度も刷られて
「五感」は五枚の版画からなる。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。アムステルダム国立美術館によれば、五枚すべてに版上の署名があり、一枚に年記がある。
16世紀のヨーロッパで、像は版画によって旅をした。一枚の銅版から多くの紙が刷れた。小さく、軽く、絵画より安く、商人や収集家が持ち運んだ。アントワープでド・フォスが描いた図案が、数か月後には別の町の誰かの手にあることもありえた。
同じ時代、ニュルンベルクではヨスト・アマンもまた「五感」の連作で嗅覚を彫った。この主題は何度も、多くの手によって、多くの場所で取り上げられた。そのたびに、一つの着想の小さな変奏となった。
シカゴ美術館の一枚は Charles Hack and Hearn Family Trust Collection に属する。アムステルダム国立美術館の一枚は、同じ版から刷られた別の刷りである。二つの大陸に二枚の紙、一つの像、同じ二つの名前。
なぜ心に残るのか
いまから見ると、「Smell」は劇的ではない。小さく、単色で、使い古された寓意の約束事に従っている。けれど、そのありふれた姿こそが、1581年に嗅覚がどう考えられていたかを示している。
嗅覚は陶酔としては描かれていない。仕事として描かれている。花を選び、整え、花瓶に挿す。香りは、遠くに町を望む庭で、人が整えるものである。
そして紙そのものも、多くの人による一つの配置である。一人が考案し、一人が彫り、一人が刷り、一人が売り、一人がとっておいた。四百年以上を経て、そのすべての手を通り抜け、それはいまもここにある。