エッセイ · 現代アート
リチャード・ロング「Cornish Slate Ellipse」
Richard Long. Cornish Slate Ellipse.
形はとどまる。石は動く。
Tate · Tate
床の上の楕円
作品は床に平らに横たわる。台座も柵もない。長さ7メートル以上、幅3メートル以上の楕円があるだけ。そこに、縁を立てたスレートの断片がぎっしりと詰められている。
一つひとつはおおよそブロック状。横に立てると高さは約10センチで、作品全体の上面はほぼ水平になる。長さはおよそ12センチから38センチまでまちまち。石は採石場で切られ、誰も揃えて削らないからだ。
主な色は灰色。近づいて見ると、鉄による赤茶色の痕跡を帯びた断片がある。上を向いた面には、スレートの層が細い線となって現れる。遠くから見れば作品は端正な幾何学。近くで見れば、どれひとつ同じでない何百もの小さな面。
リチャード・ロングは2009年に「Cornish Slate Ellipse」を制作した。ARTIST ROOMS に属する作品で、これは Tate とスコットランド国立美術館(National Galleries of Scotland)が共同所有するコレクション、画商アンソニー・ドフェイの寄贈から築かれた。2010年以来、イギリスと北アイルランドの美術館を巡回してきた。ベルファストのアルスター博物館、ケンダルのアボット・ホール、ヘップワース・ウェイクフィールドなど。
コーンウォールの採石場の石
スレートは、イングランドの南西の端、コーンウォールにある Delabole Slate Company のもの。Tate によれば、ロングはこの作品をつくるまでに25年以上そこから石を調達していた。同じスレートは、エディンバラにある1980年の「Stone Line」や、Tate が所蔵する1991年の「South Bank Circle」にも使われている。
ロングは風景の中を歩くことと結びついた作品で最もよく知られている。けれど「Cornish Slate Ellipse」は特定の歩行を記録していない。これは採石された石で、機械で切られ、ギャラリーへ運ばれた。ロングが部屋に持ち込むのは記憶ではなく、ある場所の実質そのもの。その本当の重さと表面をともなって。
重さはかなりのものだ。保管時、作品は4,237キログラムのスレート。毎回すべてを使うわけではない。石はいつも必要より多くあり、設置する人に選ぶ余地を残す。
そのたびに新しくつくられる
「Cornish Slate Ellipse」は、ひとつの物として保管されてはいない。展示のたびに、もう一度つくられなければならない。まず床に紐を張って楕円を示す。次に最も堅く安定した石を縁に沿って置き、輪郭をくっきりと保つ。
内側は残りの石で満たされる。不規則に、非対称に、流れのように曲線を描いて置かれる。だから展示ごとに少しずつ違う。できるときはロング自身が設置する。できないときは、設置者が彼の指示に従う。
それがこの作品に、奇妙な種類の生を与える。署名されたのは一度、並べられたのは幾度も。2010年にベルファストで見た人と、2017年にダービーで見た人は、同じ楕円を見たが、同じ配置は見ていない。
秩序と偶然のあいだ
ロングによれば、ブリストルの学生だった1964年、Tate で見た展覧会で、イサム・ノグチの一作、床に置かれた簡素な凸面の形に心を打たれた。学校に戻ると、小川を渡る飛び石のように、踏んで歩く石膏の作品をつくった。それ以来、床が彼の地面になった。
初期の床の作品はたいてい線か円だった。楕円はのちに、1990年代後半から現れる。石で、そして泥で描いた絵画でも。
「Cornish Slate Ellipse」は二つのものを並べる。一方には人間の幾何学。端正で引き締まった輪郭。もう一方には石。粗い鋸の跡、鉄の染み、層をなす石目が、ほとんど偶然のように置かれている。ロングは自らの作品を、線や円といった人間の抽象が自然のパターンと出会う場所だと語っている。
楕円は石をその場にとどめる。石は楕円が完全に同じになることを許さない。形と素材のこの出会いは、20世紀彫刻のもうひとつの系譜を思わせる。たとえばテキサスの砂漠にあるドナルド・ジャッドのコンクリートのブロック。ただしロングは、手と偶然をはるかに多く見せる。