エッセイ · デザインとしてのファッション
リック・オウエンス(Rick Owens)「Temple of Love」
Rick Owens, Temple of Love.
埃の灰色にさえ、名前がある。
© Rick Owens · Palais Galliera
ファッション美術館のなかの神殿
「Rick Owens, Temple of Love」は、パリ市立のファッション美術館パレ・ガリエラで、2025年6月28日から2026年1月4日まで開かれた。百を超えるシルエットが展示された。
総合キュレーターは、美術館の名誉館長ミレン・アルサルス(Miren Arzalluz)。調査を率いたのはコレクション部門長のアレクサンドル・サムソン(Alexandre Samson)。芸術監督はリック・オウエンス本人が務めた。
展覧会は展示室のなかにとどまらなかった。庭にはブルータリズムのコンクリート彫刻が三十体立った。美術館のファサードの彫像は、スパンコール刺繍の布で包まれた。庭にはカリフォルニアのつる植物や草木が植えられた。
つまり、建物もまた服を着せられたのだ。オウエンスは優雅なファサードをきらめく布で包み、その横に粗いコンクリートを置いた。古いものと新しいものが並んで立ち、どちらも譲らなかった。
黒、埃、使われた物
オウエンスは主に黒とくすんだ色調で仕事をする。そのなかには、彼が dust と呼ぶ特別なグレーもある。その名はひとつの態度を明かしている。積もるもの、見過ごされるもの、時間とともに物を覆うものの色。
素材については、軍用バッグや軍用毛布、洗いをかけた革を服につくり変えたことに、展覧会は触れている。これらは耐えるためにつくられた物だ。運ぶため、温めるため、長くもつため。服になっても、以前の生の重さと粗さを保っている。
その結果が、彫刻のようなシルエットだ。長く、ドレープし、ときに着る人をすっかり覆う。華やかさを追わない。長いあいだ存在し、いまも立っている何かに近い。
訪れる人は、オウエンスにまつわる暗く反抗的なイメージを知っている。近くで見ると際立つのは、素材への注意だ。古い毛布からコートをつくるほどそれを大切にする人は、ただ衝撃を与えようとしているだけではない。
ここには一貫性がある。埃のグレー、古い毛布、洗いをかけた革、庭の粗いコンクリート。どれも表面に時間の痕を帯びている。オウエンスは真新しい世界をつくってから古びさせるのではない。すでに古いものから出発し、それがまだ何になれるかを問う。その問いは、一着のコートから庭まで、展覧会全体を貫いている。
そばにいる人と物
オウエンスの妻ミシェル・ラミー(Michèle Lamy)は、全体を通して中心にいる。ある部屋は、夫妻のカリフォルニアの寝室を再現している。その細部が、展覧会をひとつのブランドの話ではなく、分かち合われた生の物語に変える。
展覧会は、オウエンスの源泉もひらいて見せる。作家ジョリス=カルル・ユイスマンス、20世紀初頭のハリウッド映画、近代美術と現代アート。ギュスターヴ・モロー、ヨーゼフ・ボイス、スティーヴン・パリーノの作品が、服と並んで掛けられている。
別室には、露骨な性と暴力を扱う作品が集められ、訪れる人への注意書きが添えられている。美術館はそれを隠さない。けれど、一人ひとりが越えるかどうかを選ぶ敷居の向こうに置いている。
「Temple of Love」というタイトルは、黒い布やコンクリートとそぐわないように見える。たぶん、それが要点なのだ。神殿は輝く必要はない。必要なのは、人が集まる場所と、大切に保たれてきた物と、そばにいる愛する人。