エッセイ · 現代アート
teamLab Borderless: MORI Building DIGITAL ART MUSEUM(森ビル デジタルアート ミュージアム)
teamLab Borderless: MORI Building DIGITAL ART MUSEUM.
地図のない場所。あるのは道だけ。
© teamLab · teamLab(公式サイト)
地図のない美術館
チームラボは東京を拠点とするアートコレクティブ。アーティスト、プログラマー、エンジニア、建築家からなる。2018年、デベロッパーの森ビルとともに、東京・お台場に teamLab Borderless を開いた。正式名称は「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: teamLab Borderless」。
チームラボはこの場所を短く言い表す。境界のないアート群による世界、地図のないミュージアム。来館者に番号つきの順路は渡されない。矢印もない。暗い廊下に足を踏み入れ、そこから選ぶ。
開館当初から注目を集めた。チームラボがまとめた報道資料によれば、2021年、単一のアートグループまたはアーティストの美術館として世界で最も来館者の多い美術館としてギネス世界記録に認定された。お台場の美術館はその後閉館。2024年2月9日、teamLab Borderless は東京都心の新しい複合施設、麻布台ヒルズで再び開館した。
部屋を出る作品
ふつうの美術館では、作品にはそれぞれの場所がある。絵は掛かり、彫刻は立ち、来館者はひとつから次へと移る。teamLab Borderless はその逆をいく。作品は投影された光で、ソフトウェアが動かし、そのソフトウェアが作品を移動させる。
花の流れがある部屋で始まり、廊下へ広がっていく。光でできた鳥の群れが別の作品を横切り、その色を変える。チームラボによれば、作品どうしはコミュニケーションし、影響し合い、ときに混ざり合う。来館者もまたシステムの一部だ。触れる、立ち止まる、通り過ぎる。そのすべてが像を変える。
麻布台ヒルズには名前のついたエリアがある。光の球体が浮かぶ「Bubble Universe」。子どもが描いた生き物が壁の上で動き出す「Future Park」。そして茶碗のなかに花が咲く「EN TEA HOUSE」。季節ごとに新しい作品が現れ、退いていく。
像はリアルタイムで生成されるので、同じ訪問は二度とない。作品は繰り返さない。続いていくだけだ。戻ってきた人は、覚えているとおりのものには出会えない。別のかたち、同じ家族の別の姿に出会う。だからこそ戻ってくる人もいる。季節を変えて同じ庭を訪れるように。
読み方としての身体
チームラボは書く。人は身体を通して世界を理解する。自由に動き、他者と関係を結びながら。そして身体には身体の時間がある、と。Borderless はその考えの上に築かれている。離れて眺めるのではなく、入り、なかに立ち、光が自分の上を走るのにまかせる。
だからこそ評価は分かれる。群衆のためのアート、考えるより写真を撮るのに向いている、と見る人もいる。作品と鑑賞者と空間の境目がぼやける、新しい種類の美術館だと見る人もいる。どちらにも一理ある。
草間彌生の鏡の部屋に近い。たとえば「The Souls of Millions of Light Years Away」では、鑑賞者は無数の光の点のなかに立ち、壁の感覚を失う。けれど草間は鑑賞者を閉じた部屋にとどめる。チームラボはすべての扉を開ける。
チームラボ自身の数字によれば、麻布台ヒルズの美術館は2025年に約169万人を迎えた。同じ地図をたどる人はいないから、誰もが違う道筋を持ち帰る。