エッセイ · 嗅覚アート
ライラック。組み立て直さなければならない香り。
Lilac. A smell that must be rebuilt.
花に似ている。決して花ではない。
精油を出さない春の花
ライラック(Syringa vulgaris)は、バルカン半島原産の低木で、のちにヨーロッパと北アメリカの各地に植えられた。晩春、淡い紫、濃い紫、あるいは白の小さな花を、密な房につける。その色はあまりに強く、英語とフランス語では、花の名がそのまま色の名になった。
ライラックの香りは覚えやすい。甘く、ひんやりとして、少し粉っぽい。葉からくる青い縁と、ごく軽いスパイス。風に乗り、窓から入り、服に残る。だがスズランと同じく、この花は瓶を拒む。花は小さく薄く、香りの素材は乏しく、採れたものも人が覚えている香りを保たない。今日、ライラックの抽出物は、取引にほとんど存在しない。
だから早くから、調香師たちは理解していた。ライラックが欲しいなら、組み立てるしかないと。
19世紀の処方
ロンドンの化学者で調香師の G. W. セプティマス・ピエス(G. W. Septimus Piesse)は、19世紀半ばに「The Art of Perfumery」を出版した。1857年版で彼は、ライラックは花を脂に浸して採ることができると書く。そしてすぐに、模造の処方を示す。最初の道を行く人はほとんどいないと、知っていたかのように。
処方が求めるのは、チュベローズの抽出物、それより少ない量のオレンジフラワーの抽出物、アーモンドオイル数滴、そしてシベットのチンキ少々。ライラックはまったく入っていない。ほかの白い花と、アーモンドの苦いひと触れと、すべてをまとめる動物のかすかな気配だけ。
それが当時のやり方だった。ほかの花から、ひとつの花を組み立てる。まとう人は知る必要がなかった。庭で出会った香りだとわかれば、それでよかった。
テルピネオールとヘリオトロピン
19世紀後半に有機化学が発展すると、調香師の絵の具箱は広がった。ライラックにとって中心となる素材が、二つ現れた。
テルピネオール(terpineol)は、松やカユプテなど多くの精油に自然に含まれ、乾いた清潔な花の香りでライラックを思わせる。安価で安定しており、とくに石けんでは、組み立て直された多くのライラックの背骨となった。
ヘリオトロピン(heliotropin)は、ピペロナールとも呼ばれ、甘く粉っぽく、アーモンドとヘリオトロープの香りがする。テルピネオールの清潔さを和らげ、花びらの粉っぽさを加える。のちには、ひんやりとした青さのために、ヒドロキシシトロネラールのようなスズランの分子も加えられた。
どれもライラックではない。それぞれが一筆だ。清潔さの一筆、柔らかさの一筆、ひんやりさの一筆。十分な筆を重ねれば、花が現れる。
記憶からの肖像
写すことと思い出すことのあいだには、細かな違いがある。写す人は物を見て、細部をひとつずつ再現する。思い出す人は印象を保ち、薄れたものは手放す。香水のライラックは、いつも後者に属する。花から写されたのではない。花は写せないからだ。人が花について覚えていることから、組み立てられている。
だからライラックはどれも、その作り手の痕跡を帯びている。ある人は粉っぽさを覚え、ある人は青さを、ある人は花がまだ濡れていた朝のひんやりした空気を覚えている。どれも間違いではない。どれも十分ではない。
そして本物の花は、今も毎年春に数週間咲く。ちょうどよいときに庭のそばを通る、誰のためにも。その香りはそこに、まるごとある。そして誰も持ち帰ることはできない。