エッセイ · 嗅覚アート

チャールズ・ローゼンバーグ(Charles Rosenberg)「Envelopment」

Charles Rosenberg. Envelopment.

キルトには色がある。その色には匂いがある。

チャールズ・ローゼンバーグ「Envelopment」:見る人を囲む立体の空間として立てられた、ウールとコットンのキルト

The Institute for Art and Olfaction · The Institute for Art and Olfaction



壁に掛からないキルト

「Envelopment」は、2023年9月1日から28日までロサンゼルスの IAO Gallery で開かれたチャールズ・ローゼンバーグの展覧会。題名には二つの意味がある。香水の言葉で envelopment は、香りが嗅ぐ人を包み込むありさまを指す。日常では、毛布にくるまれる感覚のこと。

キルトはギャラリーに入ると、たいてい絵画のように壁に平らに掛けられる。ローゼンバーグはそうしなかった。キルトを立体として立て、来場者がそれぞれの作品のなかへ入り、囲まれるようにした。

作品は四つ。三つはウールとコットン、ひとつはウールとシルク。どれも一辺およそ1から1.5メートル。大きくはない。人ひとりを包むには足りる。

白黒から色へ

ローゼンバーグはロサンゼルスのアーティストで、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで BFA、バスティア大学で MS を取得している。紙の作品は幾何学的な抽象コラージュで、使うのは黒、白、灰色だけ。

キルトは同じ幾何学的抽象から育った。けれどキルトは、色を扱う場を彼に与えた。そして同時に、匂いを扱う場も。

彼と香りの関わりは長い。1990年代、コラージュの制作と並行して、ニューヨークの名の知れたハーブ店 Angelica's で働いていた。二つは何年も並んで続き、「Envelopment」で出会った。

多くの匂いは共感覚的に感じられる、と彼は言う。ハーブや葉を嗅いで緑を見る。あるいはその逆。彼はまさにその方法で、それぞれのキルトの香りを選んだ。

四つのキルト、色と匂いを結ぶ四つの方法

「Verdant Envelopment」は緑と茶。緑にはシャクナゲ、カフィアライム、マジョラム。茶にはウードとアンジェリカの根。

「Blue Envelopment Jalousie」は青と黒で、横縞がジャロジーのブラインドを思わせる。香りはラベンダー、カモミール、バレリアン。しばしば眠りと結びつけられる匂い。さらに青のためにブルーカモミールのオイル、黒のためにブラックペッパーとエレミ。

「Mater-ial Envelopment」は、2022年12月に亡くなった母、リサ=クレール・ローゼンバーグ(Lisa-Clerc Rosenberg)に捧げられている。色調はピンク寄り。香りはローズ、ピンクジャスミン、ピンクペッパー、ピンクグレープフルーツ。そしてタバコとバーチタール。オペラの夜に着ていた、香水の匂う彼女のミンクのコートの記憶から。

ウールとシルクの「Empty Warning」は、香りの愛好家コナー・マクティーグ(Conor McTeague)に捧げられている。構成は枠と地のふつうの関係を反転させ、布片は中央ではなく縁に密集する。そしてこのキルトには、意図して香りが与えられていない。

なぜ残るのか

色と匂いを結ぶのは新しい考えではない。けれどローゼンバーグは、体にとても近い物でそれを行う。キルトは離れて眺めるものではない。その下に横たわり、引き寄せ、温まるためのもの。キルトを空間として立てることで、彼は見る人を、覆われる人に変える。

いちばん残るのは、展示が規則から例外へと進むこと。最初のキルトは色と香りの論理に従う。二つ目は眠りの考えを加える。三つ目では記憶が規則を破る。最後は香りそのものを手放す。四つの段階、体系から不在へ。

「Envelopment」は、匂いが手仕事の物や個人の物語と並ぶ、Institute for Art and Olfaction の一連の展覧会に連なる。グループ展「Storycraft」のように。ここでは物語が、ひと針ずつ布に縫い込まれている。