エッセイ · 嗅覚アート

ヘニング。ひとつの匂いのプリズム。

Henning. The prism of a smell.

匂いは箱のなかに収まらない。角から角へと滑っていく。

ヘニングの六つの基本臭をのせた三角柱。1916年の記述から描き直したもの


『Der Geruch』、ライプツィヒ、1916年

ハンス・ヘニング(Hans Henning)は1885年から1946年まで生きた。ドイツの心理学者である。1916年、フランクフルト大学で講義をしていたころ、ライプツィヒのヨハン・アンブロジウス・バルト(Johann Ambrosius Barth)社から『Der Geruch』(匂い)を刊行した。最初のページには、一部が以前ある心理学の雑誌に掲載されたと記されている。

ヘニングは、先人たちの方法を逆にしたとはっきり述べている。実験のあいだ、彼は化学の本を開かなかった。知覚についてだけ問うた。観察者たちは、何であるかを知らされずに匂いを与えられ、似ている順に系列へと並べた。

試験材料の主なセットは415点にのぼった。何も見落とさないよう、彼のグループは動物園へ四回、パルメンガルテンの温室へ十回、そして化学の実験室へも足を運んだ。初日には観察者たちがあまりに自信をもてず、焙煎したコーヒーとスミレを取り違えたが、二日目には系列が使えるものになった、と彼は記録している。

観察者は名前で挙げられている。十五人ほどの大人で、そのなかには彼の妻、元ワイン商とその二人の娘、機械工、そして数人の子どもがいた。ヘニングは率直に、妻の鋭い嗅覚がなければ、結果にたどりつくのは難しかっただろうと書いている。

六つの角:花、果実、スパイス、樹脂、焦げ、腐敗

系列から六つの点が浮かびあがった。ヘニングはそれを基本臭と呼んだ。似ていく方向が折れ曲がる場所である。花の香り、blumig。果実の香り、fruchtig。スパイスの香り、würzig。樹脂の香り、harzig。焦げの匂い、brenzlich。腐敗の匂い、faulig。

彼はそれらを、正三角柱の六つの角に置いた。ひとつの三角形が、花、果実、腐敗を結ぶ。もうひとつが、スパイス、樹脂、焦げを結ぶ。三本の側辺が、花とスパイス、果実と樹脂、腐敗と焦げを結ぶ。こうして三つの長方形の面ができる。

系列は連続した移り変わりを示した。クローブから、ローリエ、タイム、ラベンダー、そしてバニラを経て、観察者たちは一歩ずつスパイスから花へと進んだ。バラから、グレープフルーツ、オレンジブロッサム、ネロリを経て、花は果実へと変わった。焙煎したコーヒーは、スパイスと焦げのあいだに位置した。

ヘニングは、それぞれの長方形の面で対角線が交わることをもとに、この図形を選んだ。花、果実、樹脂、スパイスの面の中心には、ツヨン、ニガヨモギ、タンジーを置いた。観察者たちが四つの角すべてに似ていると感じた匂いである。単純な匂いは辺と面の上にだけあり、内部は混合物のためにある。彼は八面体も検討したが、退けた。焦げと腐敗が、白と黒のような対極になってしまうからだ。

1922年からの追試:一貫せず

アメリカの心理学者たちは、早くからこのプリズムを検証した。マクドナルド(MacDonald)が1922年に研究を発表し、フィンドリー(Findley)が1924年に追試を発表した。どちらも『American Journal of Psychology』においてである。2025年の『Chemical Senses』の総説によれば、フィンドリーは、観察者たちの配置が一貫しているというより、無作為に近いことを見いだした。1927年、ディミック(Dimmick)は『Psychological Review』で匂いの質の研究を概観した。

弱点は繰り返し指摘された。観察者が少なく、その多くが著者に近い人であること。統計的な検定がないこと。鼻を刺す感覚が、匂いの判断に混じっていること。ヘニングはまた、化学的な仮説も加えていた。ひとつの匂いの類に属するすべての物質は、ある種の分子結合を共有する、というものだ。のちの化学は、それを裏づけなかった。

こうしてプリズムは、匂いの標準的な地図にはならなかった。けれど消えてしまったわけでもない。

形のないものに形を与える

ヘニングから残ったのは、ひとつの考えである。匂いは連続して移り変わり、別々の箱には収まらない。20世紀後半から作られてきた統計的な匂いの地図もまた、連続した移り変わりを扱う。ただし、もう六つの角は使わない。

その図には、心を動かす何かがある。匂いには形がない。縁も面もない。それでもひとりの男が、妻と数人の友人、そして415本の小瓶とともに座り、それを空間の中の立体として見ようとした。

プリズムは細部において誤っている。けれど読む者に新しい考え方を与える。匂いはラベルではなく位置であり、いつも別の匂いのそばにある。