エッセイ · 写真

リサ・オッペンハイム(Lisa Oppenheim)「Smoke」

Lisa Oppenheim. Smoke.

煙を、それを生んだ火で焼き付ける。

リサ・オッペンハイム「Smoke」。アーカイブ写真から切り出された煙の柱。炎の光で銀と黒にプリントされている

Aperture · Aperture



アーカイブの中の煙

リサ・オッペンハイムはすでに存在する写真を扱う。アーカイブや報道、ずっと前に他人が撮った像を探し、新しい過程にかける。2011年と2012年に制作された「Smoke」のために、彼女は火災の写真を探した。

出典はほぼ1世紀にわたる。1913年の油田爆発の写真。第二次世界大戦の航空偵察写真。2011年の北ロンドン暴動を写した報道写真。

オッペンハイムはこれらの像を丸ごとは残さなかった。一つの細部だけを切り出した。煙である。建物も、人も、地面も置き去りにされた。残ったのは立ちのぼる灰色の形。どこから来たのか、何年のことか、どんな災厄なのか、手がかりはない。

文脈から切り離されると、戦争の煙と産業事故の煙はほとんど同じに見える。どちらも湧き上がり、広がり、縁で薄れる。オッペンハイムはそれらを一つの種の標本のように並べる。原因の問いは後ろに退く。残るのは消えていくものの形、そしてそれを紙の上にどうとどめるかという問い。

マッチの光でプリントする

切り出された部分はデジタルのインターネガに変換された。そして過程は暗室へ戻った。けれど引き伸ばし機のランプの代わりに、オッペンハイムは本物の炎で印画紙を露光した。マッチ、キッチン用のトーチ。

炎の光はむらがある。揺らぎ、熱く、予測しにくい。過程のなかで像はソラリゼーションを起こし、一部の階調が反転して、深い黒のそばに輝く銀の部分が残った。最終的なプリントはほとんど金属のように見える。

2013年、Aperture にオッペンハイムについて書いたブライアン・ショリス(Brian Sholis)は、これらのプリントを、アルフレッド・スティーグリッツの「Equivalents」の磨かれた銀のアウトテイクになぞらえた。20世紀初めの、あの有名な雲の写真である。彼女の煙はたしかに雲に似ている。けれどスティーグリッツの雲は空であり、彼女の煙は地上で何かが燃えた痕跡である。

大切なのは循環だ。煙は火から生まれる。写真が煙を記録する。そして火がその写真を焼き付けるのに使われる。像と、それをつくる物質がひとつになる。

ふさわしい光

「Smoke」は単独では立っていない。一つの問いをめぐる一連の作品に属している。写真が光でできているのなら、それが記録するまさにその光でプリントしたら何が起こるのか。

2010年の「Lunagrams」では、ジョン&ヘンリー・ドレイパーが撮った19世紀の月のガラス乾板ネガを使い、対応する月齢の月光のもとで複製を露光した。2011年の「Heliograms」では、1876年7月8日に撮られた太陽の写真を用い、一年のさまざまな時期に日光で露光した。彼女の予定は不規則で、露光も不規則になった。その不規則さも作品の一部になった。

月が月を焼き付ける。太陽が太陽を焼き付ける。火が煙を焼き付ける。オッペンハイムはそのたびに、像をそれ自身の光源へ返す。Aperture の記事は彼女の目的を、写真の過程の魔法を取り戻すことだと説明する。像がどこにでもあるようになると、たやすく忘れられてしまうもの。

「Smoke」のプリントを見ても、どの火がそれを生んだのかはわからない。けれど一つだけ確かなことがある。目の前の紙は、かつて炎のすぐそばにあった。