エッセイ · 現代アート

イ・ミレ(Mire Lee)。「Open Wound」。

Mire Lee. Open Wound.

皮膚の一枚一枚が、ひと勤務の労働の痕である。

イ・ミレ「Open Wound」。テート・モダンのタービン・ホールの天井から長い鎖で吊られた、裂けた桃色と灰色の布

Tate Modern · Tate Modern



生きている工場

2024年10月9日から2025年3月16日まで、テート・モダンのタービン・ホールはふたたび工場として動いた。作品はイ・ミレの「Open Wound」。1988年韓国生まれの作家が、ヒュンダイ・コミッションのために制作した。

正面入口からスロープを下りてくると、来場者ははるか上から垂れ下がる長い金属の鎖の列の下を歩いた。鎖には、裂けた網のような布の断片が掛けられ、くすんだ汚れた桃色と灰色に染められている。イ・ミレはそれを皮膚と呼ぶ。スロープを下るほど、細部がはっきりしてくる。滴る液体の音が、人々を橋の向こうへと引き寄せた。

ホールの東端、もとの建物に属する天井クレーンから、長さ8メートル、重さ3トンを超えるモーター駆動の金属タービンが吊られていた。それはゆっくりと回った。取りつけられた太いシリコンのホース、イ・ミレが触手と呼ぶものから、粘りのある赤褐色の液体が大きなトレイへと流れ落ちた。

その下には高さ6メートルの金属のガントリーが三基立ち、湾曲した鋼の枠に白い布が掛けられていた。この一帯を、足場用のパイプでできた胸の高さの柵が囲んでいた。幅10メートル、奥行き17メートル。来場者はぐるりと一周できたが、中には入れなかった。

皮膚が生まれるまで

「Open Wound」は静止した情景ではなかった。生産ラインだった。新しい皮膚はタービンの下で濡らされた。技術者がそれを近くのラックに移して固めた。それから宙に引き上げられ、鎖に掛けられた。

時とともに、皮膚は頭上に積み重なっていった。テートはそれを、建物の体から生まれ出ると同時に、天井から剥がれ落ちるように見えるものと記す。誕生と脱皮、生産と崩壊が、機械と人の手を通して同時に起こっている。

布を乾かすことは、繊維の製造を思い起こさせる。鎖は坑口の浴場から来ている。そこでは滑車の仕組みによって、炭鉱夫たちは地下で働くあいだ、あるいは家で休むあいだ、服を天井から吊るしておけた。何世代もの労働者が、その通過の空間に集まり、汚れと痛みと疲れを洗い流した。

イ・ミレは橋の両側の外装も取り外させ、内部の配線と支柱をむき出しにした。テートはそれを産業の体のはらわたと呼ぶ。天井クレーンはふたたび使われた。眠っていた建物の部分が目覚めさせられた。

閉じない傷

テート・モダンは、かつてのバンクサイド発電所の跡地にある。タービン・ホールにはかつて石炭と石油を燃やすボイラーがあり、ロンドンのための電気を生み出していた。イ・ミレは、産業の歴史をその暴力と規模において畏怖すべきものと感じる。不安定さと衰退のなかを生きる人々の身体的、感情的な労働について考える。ひとつの個人の生が、より大きな仕組みに巻き込まれていくのを見つめることについて考える。

ホールの中心のタービンは、イ・ミレの言葉では、決して閉じない開いた傷である。題はそこから来ている。イ・ミレは、産業の機械が人間の性質を帯びていくさまに惹かれる。モーターは胃のように働く。ポンプには腸のような管がある。彼女の彫刻は、裏返しにされた生きものと機械のように見える。シリコンのチューブとローテクのモーターがむき出しになっている。

彼女は、現代のテクノロジーの清潔で無菌的な見た目を拒む。そのかわりにあるのは、彼女が衰退の時間と呼ぶもの。何かが枯れはじめた、打ち捨てられた工事現場の気配である。

皮膚、そして他者

イ・ミレは、皮膚が他者性を記録するからこそ、ずっと皮膚に関心をもってきたと言う。この作品で皮膚は、個と集団のあいだの緊張についてのものでもある。皮膚どうしは大きさが違うだけだ。まとめて吊るされると、溶けた体、あるいは形を変えうる体が、同じ肉を分けあっているように見える。

彼女はフェミニストやクィアの作家、思想家に拠りどころを求める。そのなかには1953年生まれの韓国の詩人、キム・オニもいる。テートは、この作品が相反する感情とともにとどまるよう私たちを誘うと書く。畏怖と嫌悪、慈しみ、恐れ、そして愛。

その3年前、同じコミッションのシリーズで、アニカ・イは空飛ぶ機械を生きもののようにホールへ放った。どちらの作品も、機械はどこまで生きていられるのかを問う。イ・ミレの答えでは、すべてがより湿って、より遅く、より痛い。

テートはひとつの問いで締めくくる。今日、美術館が生み出しているものは何か。「Open Wound」は言葉ではなく、新しい皮膚で答える。毎週、天井にもう数枚ずつ。