エッセイ · 嗅覚アート
著作権。香りは誰かのものになりうるか。
Copyright. Can a smell belong to someone?
手に取れないものが、誰かのものになりうるか。
事件は二つの香水から始まった。ひとつは Lancôme の Trésor。もうひとつは、オランダの会社 Kecofa が市場に出した Female Treasure。Lancôme は、Female Treasure の香りが Trésor の香りを模倣していると主張し、著作権法にもとづいて訴えた。
難しさは、まさに最初の問いにあった。著作権は著作物を守る。一篇の詩、一枚の絵、一曲の音楽。香りは著作物になりうるのか。形もなく、言葉もなく、じっとしていない。肌の上で変わり、数時間で漂い去る。
2006年6月16日、オランダ最高裁判所(Hoge Raad)が答えを出した。Kecofa の上告を退け、Lancôme 勝訴の判決を維持した。模倣品で得た利益を Kecofa が引き渡すよう命じた部分も含めて。
香りは著作物、液体は担い手
裁判所の論理は、ひとつの明快な区別に立っている。ボトルの中の液体は、その化学的組成も含めて、著作物ではない。それは著作物を運ぶだけだ。著作物とは香り、つまり人の感覚が知覚できるものである。
保護されるためには、その香りが独自の性格をもち、つくり手の個人的な刻印を帯びていなければならない。これはオランダ法が他のあらゆる種類の著作物に当てる基準と同じだ。裁判所は香りのための特別な法をつくったわけではない。香りが最初から除外されるわけではない、と言っただけである。
判決はいくつかの限界も示した。技術的な働きのためだけにある部分は保護されない。既存の様式や伝統に沿う香水も、それによって独創性を失うわけではない。けれど先行する香りに似ていることだけでは模倣の証明にならない。この事件で裁判所は、Female Treasure が Trésor の際立った特徴を再現していることを示した専門家の分析に依拠した。
共有された答えのない問い
オランダの判決は、一国の判決にすぎない。ヨーロッパ各地で、香りは著作物になりうるかという問いは他の裁判所にも持ち込まれ、すべてが同じ結論に至ったわけではない。業界の人々はいまも議論している。香水は作曲に近いのか、それとも技能に近いのか。
どちらの側にも耳を傾ける価値がある。香りを著作物とみる人は言う。調香師は、作曲家が音を選ぶように素材を選び、並べる。その結果には、内部の人が見分けられる個人的な刻印がある。もう一方の側は、香りを正確に記述するのはとても難しく、正確な記述がなければ権利がどこで終わるのかを知るのも難しいと懸念する。誰かが、もう一方の香りを知らないまま、偶然に近い香りをつくることもありうる。
両者が認める点がひとつある。香りは法を見慣れない場所に置く。法は、指させるようにじっとしている物に慣れている。香りはじっとしていない。
揮発するものと、物の法
Penta は Lancôme 対 Kecofa を、二つの会社の勝ち負けとしては読まない。紙と固い形に慣れた制度が、蒸発するものを真剣に見つめざるをえなかった、まれな瞬間として読む。
オランダの答えには、それ自体の美しさがある。香りが本物と認められるために、じっとしていることを求めない。大切なのはノートに書かれた処方ではなく、感覚に届くものだと認める。言い換えれば、裁判所は嗅ぐ人を中心に置いた。
それでも問いはそのまま残る。固定できないものが、本当に誰かのものになりうるのか。香りはボトルを出て、コートにまとわりつき、部屋に広がり、見知らぬ人の記憶にとどまる。つくり手は複製に対する権利を持てるかもしれない。痕跡はもう行ってしまった。
2019年にローザンヌで開かれた展覧会 Nez à nez は、13人の現代の調香師の香りを紹介し、一枚の絵の前で画家の名を挙げるように、一人ひとりの名を記した。これも同じ問いへの別の答え方だ。法によってではなく、つくり手の名を挙げることによって。