エッセイ · 嗅覚アート
OAK@IAO。
OAK@IAO.
一年分の匂いを、大陸の向こうへ送る。
Institute for Art and Olfaction · Institute for Art and Olfaction
荷造りされた一年
2022年2月、1日から28日まで、ロサンゼルスの Institute for Art and Olfaction は、メールアドレスのように短い名前の展覧会を開いた。OAK@IAO。OAK は Olfactory Art Keller。匂いだけを展示するマンハッタンのギャラリーで、2021年に嗅覚科学者アンドレアス・ケラー(Andreas Keller)が開いた。IAO はロサンゼルスの嗅覚アートの研究所で、チャイナタウンのチョンキン・ロード(Chung King Road)にある。
展示は Olfactory Art Keller の最初の一年からの選集。作品はニューヨークで開かれた三つのグループ展から集められた。「Perfumers Gone Wild」「Ten Encounters」「New York/New Fumes」。
この移動には心地よいものがある。嗅覚アートに身を捧げる二つの組織が、アメリカの両岸にある。ひとつはニューヨーク、ひとつはロサンゼルス。一方が送り、一方が受け取る。そのあいだに大陸がひとつと、問いがひとつ。匂いでできた作品は旅ができるのか。
絵は木箱に詰められる。彫刻は包める。匂いは違う。蒸発し、別の空気のある別の部屋で、もう一度据え直さなければならない。展覧会のたびに、作品はもう一度生まれる。
調香師と芸術家
OAK@IAO の参加者リストは、めったに出会わない二つの世界を混ぜている。一方には職業調香師。ふだんは香水ブランドの依頼で働く人々。マスター調香師クリストフ・ロダミエル(Christophe Laudamiel)は「New York/New Fumes」からの作品を出した。カルロス・ベナイム(Carlos Benaim)、ノムラ・チアキ(Chiaki Nomura)、イリーナ・アダムス(Irina Adams)、テッサ・リーブマン(Tessa Liebman)、イヴ・カサール(Yves Cassar)も香りを寄せた。「Perfumers Gone Wild」という題が多くを語る。商業の制約から解き放たれた調香師たち。
もう一方には、長年匂いと向き合ってきた芸術家たち。「World Sensorium」の作者ガイル・ナルズ(Gayil Nalls)は「New York/New Fumes」からの作品を寄せた。ジョゼリー・カルヴァーリョ(Josely Carvalho)は吹きガラスの香る彫刻「Suspensio」を持ち込んだ。彼女は2019年に実験的な香りの作品に贈られる Sadakichi Award を受け、自らの匂いの日記に何年も取り組んできた。
M・ドハティ(M Dougherty)は、菌糸体、蜜蝋、樹脂でできた彫刻「/FOREST BATH」をつくり、精油を染み込ませた。ブライアン・ゴルツェンロイヒター(Brian Goeltzenleuchter)は「Scents of Exile」を設置した。難民と移民の暮らしを扱う、香りつきの手指消毒ステーション。2022年2月、世界はまだパンデミックのせいで絶えず手を洗っていた。ギャラリーの消毒ステーションは奇妙な物ではなかった。作品は、そのなじみの仕草を、誰が清潔とみなされ、誰がよそ者として扱われるのかという問いに変えたものとして読める。
若いバナナ、古いバナナ
最も記憶に残るのは、カミラ・ニクラウス・マウラーの「olFACTORY」かもしれない。二つの匂いによるサイトスペシフィックなインスタレーション。Young Banana と Old Banana。
名前はこれ以上ないほど単純。けれど、台所のカウンターにバナナの房を置きっぱなしにしたことのある人なら誰でも知っていることを開く。青いバナナはほとんど草の匂い。熟した黄色いバナナは甘い。皮に茶色い斑点の出た古いバナナは、重く、ほとんど酒のような匂い。同じ果実、毎日違う匂い。
そのうちの二つの瞬間を切り離して並べることで、マウラーは訪れる人に鼻で時間を知覚させる。時計も写真もない。二つの匂いと、そのあいだの距離だけ。
それは OAK@IAO 全体の読み方でもあるかもしれない。ニューヨークでの一年分の展示は、ロサンゼルスに着くころには少し年をとっていた。別の部屋、別の空気に置かれた匂いが、最初とまったく同じであることはまずない。それで作品が弱まるわけではない。匂いが生きた素材であることを思い出させるだけ。いつも熟し、いつも変わっていく。ギャラリーの中でさえ。